[fpr 2507] 多属性多肢選択意思決定:補足

tsuzuki (at) rikkyo.ac.jp

FPRの皆様,立教大学社会学部の都築と申します.

先に,舌足らずの投稿をしてしましましたので,いちおう補足させてください.

多属性多肢選択意思決定行動では,ご存じのように「合理的な決定基準」
に基づいた規範的ルールからはずれた「非合理的選択現象」がいくつか,
実験的に見いだされています.主なものとして,下記の3つがあり,
 ・Similarity Effect (Tversky, 1972)
 ・Attraction Effect (Huber, Payne & Puto, 1982)
 ・Compromise Effect (Simonson, 1989)
これに加えて
 ・Phantom Effect (Pratkanis & Farquhar, 1992)
も取り上げることがあります.

Hastie (2001)はAnnual Reviewで以下のように述べています:
「判断・意思決定研究には4つのフレームワークがある.
1. Connectionist-neural computational processing (e.g. Grossberg &
 Gutowski, 1987; Leven & Levine, 1996)
2. Information processing (symbolic production systems; e.g. Lovett,
 1998, Payne etal, 1993)
3. Traditional cognitive algebra (Anderson, 1981; Birnbaum, 1999)
4. Measurement-theoretical algebra (Luce, 2000; Toversky &
 Kahneman, 1992)
現象の認知的プロセス記述は,数理的モデルよりも良い解答である.つま
り認知的記述は,因果レベルで個々の思考プロセスをとらえることができる.
これに対し,連続的で量的な数理的記述は,そうした認知プロセスの平均
値を記述するにすぎない.」

私は,最近,上記のSimilarity Effect,Attraction Effect,Compromise
Effectの3つを統一的に説明できる一種のコネクショニストモデル(ニューラ
ルネットワーク)のシミュレーションも行っています.最近の代表的な先行研
究としては,Roe, Busemeyer, Townsend (2001)によるDecision field
theoryをふまえたコネクショニストモデルがあります.

私はsimilarityに基づいたgroupingや,こうした比較を変動させるモデルを作
成しました.このアプローチは,Russo & Rosen (1975) や,里村,中村,
佐藤(1997)などの実験データをふまえています.換言すれば,Medin,
Goldstone, & Markman (1995)が主張するように,similarity processと
decision processを関連づけてとらえるべきだという観点を重視しています.

そういうわけで,測定理論,数理心理学,知覚などの分野でも,人間の選択
行動は3肢選択であっても,2肢選択の組み合わせが基本であるといった論
文が発表されているのではないかと考え,先の投稿をさせていただきました.
こうした点につきまして,情報をお持ちの先生方はご教示下さいますよう,お
願いいたします.

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Takashi Tsuzuki, Ph.D.
Visiting Scholar, 6625 Franz Hall
Department of Psychology
University of California, Los Angeles
405 Hillgard Avenue, Los Angeles,
CA90095-1563, U.S.A.
TEL & FAX: 310-214-2765
  



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