[fpr 2535] the SD

堀啓造

堀@香川大学経済学部です。

Re: [fpr 2534] Re: 変数が観測数より多い場合のPCA,FA


> 商品評価に多くの言葉でSD法を使った場合,
> まずまったく探索的な意味構造の分析であって,
> とくに独自因子と共通因子に分けて考えるべき理由がないからです.
> そして,商品によって,意味構造ががらっと変わることが多い.
> たとえば腕時計と指輪では,おなじ言葉をつかっても,反応がまった
くちがいます.
> ボーイッシュな女性用腕時計はあるが(Baby-Gなど)
> ボーイッシュな女性用指輪はまずない.
> そうすると,言葉のあいだの相関が異なるわけです.
> 意味構造ももちろん異なる.
> (ときどき,Osgoodの3因子説を金科玉条のようにとなえる人がいて
>  けんかになります.だいたいアメリカ人ですが.
>  Osgood自身も晩年はそんなに主張していませんが.)
> したがって,独自因子と共通因子に分けるべきバックボーンが無い.

この種の議論のとき,いくつかの観点が必要でしょう。

例えば,
(1)評価する尺度の問題としてのモデル。
(2)診断的意味が必要か,単なる測定でよいのか。

(1)に関しては3相因子分析などを考えるといろんなモデルのたて方があ
り得ることがわかります。個人差モデルでいくと,
(a)もっともシンプルなのが,すべての概念,すべての人において共通の
尺度が用いられている。

(b)個人によって尺度の重み付けは違っているが共通の尺度が存在してい
る。(多次元尺度法のINDSCAL) 

(c)個人によって,尺度が異なっている。

これに,概念をさらに絡ませることになります。SD法では有名なように
概念によって尺度が異なるし,項目の尺度への帰属が異なっている。
この組合せを考えるだけで頭が痛くなってきます。

Osgoodらはなるべく概念普遍の尺度を作ろうとしたわけです。そうする
と,(2)の問題が当然出てきます。

このような3因子を使うと診断的意味がはっきりしない。さらには表面
的妥当性が低いようだ。しかも,ほとんどの項目は評価である。
東大系のみなさんの調査結果の各種分析は
http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/yomimono/sd.html
どのような項目が評価かについては
http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/yomimono/sd.html#oblimin

にある。相関行列そのものは特異行列であった(これはwebのどこかに公
表してなかったっけ。まだだったかな「因子分析練習帳SD法編」に予定
しているが,ほかのSD法データがないのでそのままだったかな?性格
データ,SDデータなんでも使っていいのがあればください。)。データ
収集法から起こるべくして起こったことである。Osgoodらの日本の調査
のデータがあれば再分析するのですが,見あたらない。

だいたい,varimax回転だと4因子ていうのをどう考えるのかな。Osgood
らの本ではEPAの3因子にまとめてました。

相良先生らのデータからすると評価以外の項目がもともと少なすぎま
す。

で,万一3因子でもその組合せ方でもう少し診断的意味を増すこととが
できるが,まあ,あまりよくないだろう。顕著な評価尺度を生かせない
だろう。

もちろん指摘のように概念によって項目の意味合いが異なってくること
の問題も大きい。これは,より一般的通用する項目を選択すればどうな
のと言えるが,先ほどのPAの項目が少なすぎて代用が難しい。

,Journal of Economic Psychology にブランドの評価をbig 5の項目で
評価しているのがあった。この論文のタイトル等は忘れたが,各ブラン
ドごとに因子分析をして構造が違うといっていた。それってbig 5の考え
と違うとつっこみを一人でいれてしまった。人間だって,一人一人を
別々に因子分析すれば異なる因子がでてくるだろうが。これはモデルの
たて方の問題。

共通の尺度があると考えるのか,別々のほうがいいのかはいろいろ考え
てみるべき問題を含んでいる。

ところで,因子分析もしくは主成分分析のとき平均値をとってから相関
行列をつくっているのでしょうか。SD法の主たる方法はstring-out 法と
して平均値をとらないタイプでしょう。吉田『心理統計法』丸善参照。

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堀 啓造(香川大学経済学部)
home page http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/


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