堀さん さっそくありがとうございました. 楽しい議論になってきました. >> 商品評価に多くの言葉でSD法を使った場合, >> まずまったく探索的な意味構造の分析であって, >> とくに独自因子と共通因子に分けて考えるべき理由がないからです. >> そして,商品によって,意味構造ががらっと変わることが多い. >> たとえば腕時計と指輪では,おなじ言葉をつかっても,反応がまった >くちがいます. >> ボーイッシュな女性用腕時計はあるが(Baby-Gなど) >> ボーイッシュな女性用指輪はまずない. >> そうすると,言葉のあいだの相関が異なるわけです. >> 意味構造ももちろん異なる. >> (ときどき,Osgoodの3因子説を金科玉条のようにとなえる人がいて >> けんかになります.だいたいアメリカ人ですが. >> Osgood自身も晩年はそんなに主張していませんが.) >> したがって,独自因子と共通因子に分けるべきバックボーンが無い. > >この種の議論のとき,いくつかの観点が必要でしょう。 > >例えば, >(1)評価する尺度の問題としてのモデル。 >(2)診断的意味が必要か,単なる測定でよいのか。 診断という言葉がどういう意味でお使いなのか,定義していただけると幸いです. 私の理解では, 診断的というのは,つかえるモデルのフレームがあり, それからどのくらい外れているのか,当てはまるのかを判定するという 意図のことかと思います. もしこの理解が正しければ,我々が日常やっているような ものづくりの現場との共同作業では, 診断的な意味は全く無く,単なる測定です. その理由は,先に書いたように評価対象によって 同じ評価語でも,相関構造が大きく異なるからです. 誤解してもらうと困りますのでややしつこい書き方で申し訳ありませんが, “評価語(形容詞が多い)の意味が変化するのではなく” “相関構造(Osgood風だと意味構造になりますが意味というと混乱するので) が変化する” わけです. >(1)に関しては3相因子分析などを考えるといろんなモデルのたて方があ >り得ることがわかります。個人差モデルでいくと, >(a)もっともシンプルなのが,すべての概念,すべての人において共通の >尺度が用いられている。 > >(b)個人によって尺度の重み付けは違っているが共通の尺度が存在してい >る。(多次元尺度法のINDSCAL) > >(c)個人によって,尺度が異なっている。 > >これに,概念をさらに絡ませることになります。SD法では有名なように >概念によって尺度が異なるし,項目の尺度への帰属が異なっている。 >この組合せを考えるだけで頭が痛くなってきます。 >Osgoodらはなるべく概念普遍の尺度を作ろうとしたわけです。そうする >と,(2)の問題が当然出てきます。 ここで言われている概念という言葉は,Osgoodの"concept"ですね? 評価対象(“ロシア人”とか)に普遍的尺度を作ろうとしたということは, 私は,全ての評価対象をマッピング可能なモデル(直交空間)として EPAを主張したと理解しています. そういう意味では,(私の理解の)“診断的”な意図だと思います. Osgoodはそこで頑張りすぎたというか. >このような3因子を使うと診断的意味がはっきりしない。さらには表面 >的妥当性が低いようだ。しかも,ほとんどの項目は評価である。 >東大系のみなさんの調査結果の各種分析は >http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/yomimono/sd.html >どのような項目が評価かについては >http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/yomimono/sd.html#oblimin > >にある。相関行列そのものは特異行列であった(これはwebのどこかに公 >表してなかったっけ。まだだったかな「因子分析練習帳SD法編」に予定 >しているが,ほかのSD法データがないのでそのままだったかな?性格 >データ,SDデータなんでも使っていいのがあればください。)。データ >収集法から起こるべくして起こったことである。Osgoodらの日本の調査 >のデータがあれば再分析するのですが,見あたらない。 > >だいたい,varimax回転だと4因子ていうのをどう考えるのかな。Osgood >らの本ではEPAの3因子にまとめてました。 両方ともみせていただきました. 論理的評価・感性的評価というのは柏木さんの論文で使った用語ですか? 私がこれまでにいろんな工業製品でSD法で分析した結果と, かなり一致しています. 大体,EPAのうち,2つ,すくなくとも1つは出てくるのですが 3つそろって出てくることはまず無いです. >もちろん指摘のように概念によって項目の意味合いが異なってくること >の問題も大きい。これは,より一般的通用する項目を選択すればどうな >のと言えるが,先ほどのPAの項目が少なすぎて代用が難しい。 これの後半,“一般的通用する項目”について,もうちょっと説明していただけます か. >,Journal of Economic Psychology にブランドの評価をbig 5の項目で >評価しているのがあった。この論文のタイトル等は忘れたが,各ブラン >ドごとに因子分析をして構造が違うといっていた。それってbig 5の考え >と違うとつっこみを一人でいれてしまった。人間だって,一人一人を >別々に因子分析すれば異なる因子がでてくるだろうが。これはモデルの >たて方の問題。 一見して意味が無いことをやっているように思えるのですが, その著者は,どうしてbig5(のモデル)をそこで持ち出すのでしょうか. もう1点は,1つ1つのブランドが1つ1つの評価対象? どういう実験だろうか?? >ところで,因子分析もしくは主成分分析のとき平均値をとってから相関 >行列をつくっているのでしょうか。SD法の主たる方法はstring-out 法と >して平均値をとらないタイプでしょう。吉田『心理統計法』丸善参照。 3相3元データをどうやって2相2元に落としているかという話でしょうか? 私は多くの場合,被験者間平均をとり,仮想的に被験者1名として 落としています. これのメリット・デメリットについてはまた. 個人差については,これを無視しているわけではありません. 3相3元データを2段階のクラスター分析をおこなって 個人差を分析する方法を考案し, 感性工学会のKansei Engineering Internationalに99年に載せています. それについても,また別の便で. 石原茂和 広島国際大学 人間環境学部 感性情報学科 724-0695 広島県賀茂郡黒瀬町学園台555-36 tel:0823-70-4890 fax:0823-70-4852 e-mail: i-shige (at) he.hirokoku-u.ac.jp
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