[fpr 2589] アンケート作成のテクニックについて

murakami (at) edu.toyama-u.ac.jp
藤代　誠　様



偉い先生が忙しいようなので、代理です。


客観的な尺度としての検査結果を理解することを目標ということですから、患者の回答をそのまま真実とうけとって分析する意向と理解しました。しかし、質問が抽象的で、具体性に欠けるので、患者は回答に困るのではないでしょうか。

また、回答の選択肢も主観評定なので、患者がどの程度具体的に分かったのか、この調査ではわかりません。もっと具体的な選択肢を質問ごとに作ってもよいように思います。


> 臨床検査技師（糖尿病療養指導士）として勤務しております。
> 下記の研究について、お尋ねします。
> 
> 　糖尿病教育入院での臨床検査技師における集団講義の効果として、患者の検査
> 結果に対する認識の評価をアンケートにより調査したいと考えております。
> 　臨床検査技師が行っている集団講義は、臨床検査技師の専門性を元に患者に検
> 査結果の正常範囲や糖尿病をコントロールするための検査項目を理解し、退院後
> の外来での患者自身の経過を見た場合の客観的な尺度としての検査結果を理解す
> ることを目標としています。今回、集団講義の前後でアンケートを行い、各質問
> 事項の回答を５段階評価します。患者に１から５を選択してもらい。（１：解ら
> ない、２：少し解らない、３：どちらでもない、４：少し解った、５：解った）
> 前後での優位差を見てみたいと考えています。
> 　
> ここで、アンケートの作成なのですが、勝手に作成して良いものなのかという事
> ですが、糖尿病療養指導士の受験をしたときの認定機構のガイドブックに評価法
> としての質問事項のようなものが記載してあったので、その内容を参照して質問
> を作ってみました。下記にアンケートの内容を示します。
> ------------------------------------------------------------------------

> ----
> 質問①　いままでに、糖尿病教育の講義をうけた事はありますか？

「いままで」とはいつからか、5年以内か10年以内か、小学校の時からか、
糖尿病教育とは何か、医者に受けた教育か、他の教育機関で受けた教育も含むのか、

> 質問②　糖尿病と診断するまでの検査結果をご存知ですか？
> 質問③　糖尿病の合併症の検査にどのようなものがあるかご存知ですか？

合併症にもいろいろあると思うが。

どういう合併症なのか、不明。

様々な合併症に対して、どれだけ知っていれば良いのか。



> 質問④　グリコヘモグロビンA1cはご存知ですか？

名前を知っている。
どのような作用をするのを知っているのか。


> 質問⑤　糖尿病の合併症予防には、どのような検査が必要かご存知ですか？
> 質問⑥　運動や食事がどのような検査に影響を与えるかご存知ですか？

影響があることを知っている。

影響の結果、検査のデータがXXになることを知っている。

運動の影響は知っているが、食事の影響は知らない。食事の影響は知っているが、運動の影響は知らない。そういう人はどう答えればよいか不明。食事と運動の質問を別にすべき。




> 質問⑦　動脈硬化や高血圧を調べるための検査について、ご存知ですか？

検査の名前を知っているのか、
検査内容をどの程度知っているのか、
受けたことがあるのか。

> 質問⑧　外来受診をしたときに、自分の検査結果を見て自分の結果を評価してい
> ますか？

「自分の結果を評価」とはどういうことか。良いとか、悪いとか思うことか。




> ------------------------------------------------------------------------
> ----
> このような内容を企画していますが、もし質問の作成形式がありましたら、教え
> てください。
> 
> 
> 

質問紙の作り方は、

Kline, P.  1986  A handbook of test construction. New York: Methuen, Inc. が比較的コンパクトで内容も

わかりやすいと思います。



昔、書いた原稿を挟んでおきます。


\subsubsection{質問項目の執筆}

上記の反応歪曲がなるべく現れないように、注意深く質問項目を執筆する必要がある。クライン(Kline, 1986)を参考にしてまとめておこう。

\begin{itemize}

    \item 質問項目はわかりやすく、明瞭に書く。単純な平叙文で、小学生にもわかるように執筆するよう心がける。質問に複数の意味が含まれないようになるべく単文で表現する。意味の不明瞭な項目は中心傾向を招きやすい。経済企画庁の\lq\lq 中流意識\rq\rq がこれにあたる。
    
    \item 一般的な単語を避け、具体的で、特殊な単語を使う。例えば、「スポーツが好きですか」という質問がある場合、スポーツとは何か不明である。ラグビー、サッカー、野球、ボーリング、あるいは、ゴルフかもしれない。スポーツという一般的名称では、被験者の回答は人によっと大きく異なってしまう。自分でスポーツはしないが、テレビで野球を見るのが好きという人も、この項目に「はい」と回答するだろう。同様に、環境問題、音楽番組、インスタント食品も抽象的な一般名称である。
    
    \item 感情に関わる述語を避ける。例えば、「スポーツが好きですか」の「好き」という言葉も一般的内容で意味は不明瞭である。もっと限定的に「ゴルフを月に二、三回やりますか」と聞いた方がよい。
    
    \item 「しばしば」、「頻繁に」、「たまに」などの副詞はなるべく使わない。例えば、「しばしば夢をみますか？」という質問項目があると、人によって「しばしば」の解釈が違ってしまう。一晩に何遍も夢を見ることと考える人は「いいえ」と回答するだろうし、一週間に一度程度と解釈して「はい」と回答する人もいる。被験者の回答から夢の頻度を推量することができない。
    
    \item あまり深く考えさせない項目にする。例えば、「鮮やかな夢を見ますか？」という項目があると、大部分の人は簡単に「はい」か「いいえ」で回答できるだろう。しかし、「鮮やかな夢」とは何かと考え出すと、なかなか結論はでない。また、この項目は精神異常を測定するのだろうかと疑いだすと、うかつに「はい」とも答えられない。解釈のむずかしい形容詞は避けた方がよい。
\end{itemize}



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村上宣寛 


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〒930-8555　富山市五福3190
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