fprの皆様: 南風原です。 [fpr 2694] 堀さんから: > 各自勝手に訳していて,しかも勝手に新た > な項目を付け加えているそうだ.ご本人も自分で訳すのが研究者の > 態度だと思っているようだった.これでは蓄積はできないよね. 「蓄積はできない」という点,重要ですね。物差しが固定されないと蓄積も 比較もできないですから。これは,研究ごとに物差しが変わってしまうこと の問題ですが,論文などを見ていると,同一の研究内でも対象集団によって 因子分析結果が違うからとの理由で,物差し(尺度を構成する項目セット) を変えているケースもあります。その結果,「男女間で尺度得点の分布を比 較することが目的であったが,因子分析結果により,その比較が不可能と なった」と結論づける例もあるようです。因子分析結果にあまりに忠実であ ろうとして,本末転倒なことになっているように感じます。 [fpr 2696] 岡本さんから > 村上さんの書かれたこと、基本的に同感です。 > > >最近は卒論でも外的基準との相関を証明せよと学生をいじめています。 > > しかし、この相関どれくらいだといいのでしょうか。 この点も難しいですね。ある尺度がある外的基準とたとえば0.5の相関がある とすると,その尺度のベクトルはその外的基準のベクトルと60度の角度を もっていることになります。しかし,外的基準のベクトルと60度の角度を もっているベクトルは無数にありますから(外的基準ベクトルを芯にして60 度の角度を保ってぐるっと回転できます),それだけでは,その尺度が何を 測っているのかということはほとんど分からないと言わざるを得ないでしょ う。相関が0.9以上になると角度が25度以下に小さくなりますから,何を測っ ているのかはかなり限定されてきますが,すでに存在する尺度と0.9以上の相 関があるような尺度を新たに作っても仕方がないという面もありますから, 難しいところですね。理想的には,複数の外的基準との間に,その尺度で測 りたい構成概念の定義内容からして,ある特定の相関パタンがあることが予 測され,その予測が実際のデータで確認される,ということになればいいの でしょうが。 ---- 南風原 朝和 haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp
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