南風原です。 murakami (at) edu.toyama-u.ac.jp さんからの引用: > 豊田さん、南風原さんの意見を入れて修正。第三刷以降に反映されます。 > > P.15 > ここではカイ自乗検定を60個の仮説に繰り返した。一回の検定は5%以 下の危険率(いわば外れ率)だが、60回もやれば5%+5%+・・・+5% = 300%以下の危険率になってしまう。これでは60項目のうち3項目ぐ らい、有意になってもちっとも不思議ではない。 > > 修正--->ここではカイ自乗検定を60個の帰無仮説に繰り返した。1回の検定 は5%の危険率(いわば外れ率)なので、すべての帰無仮説が成立する確率は、 各々独立の事象だから0.95(=1−0.05)の60乗で、0.05となる。少なくと も1回は帰無仮説が否定される確率は1−0.05= 0.95である。つまり、60項目 のうちいくつか有意になっても不思議ではない。 本を修正なさるということなので,急ぎ,コメントさせていただきます。 まず,細かいところでは,「帰無仮説が成立する確率」という表現が引っか かりました。このままだと「帰無仮説が真である確率」のようにも読めてし まいます。「帰無仮説が採択される確率」とするか,あるいは,その後の 「帰無仮説が否定される確率」という表現と対応させて「帰無仮説が肯定さ れる確率」とするかしたほうがよいのではないでしょうか。 それから,60回の検定結果がどうなるかが「それぞれ独立の事象」である と書かれていますが,同じ被験者について項目を変えただけの検定の結果は 互いに独立にはならないと思います。そのため,独立性を前提とした計算は 成り立たないように思います。 この部分,「「心理テスト」はウソでした。」のモードであれば,以下のよ うな説明もよいのではないかと思いました。「ここではカイ自乗検定を60 回も繰り返した。1回の検定は5%の危険率(いわば外れ率)であり,単なる 偶然によっても20回に1回は,有意な結果が得られるという仕組みになっ ている。この研究では60項目のうち3項目が有意になったということだか ら,血液型人間学が成り立たないときに,単なる偶然によって有意な結果が 出る割合とちょうど一致している。つまり,この結果は,「血液型人間学は 正しくない」という仮説とぴったり合った結果と言える。」 ---- 南風原朝和 haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp
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