[fpr 2787] 「心理テスト」はウソでした。

南風原朝和

南風原です。

murakami (at) edu.toyama-u.ac.jp さんからの引用:

> 豊田さん、南風原さんの意見を入れて修正。第三刷以降に反映されます。
> 
> P.15
> ここではカイ自乗検定を60個の仮説に繰り返した。一回の検定は5%以
下の危険率(いわば外れ率)だが、60回もやれば5%+5%+・・・+5% 
= 300%以下の危険率になってしまう。これでは60項目のうち3項目ぐ
らい、有意になってもちっとも不思議ではない。
> 
> 修正--->ここではカイ自乗検定を60個の帰無仮説に繰り返した。1回の検定
は5%の危険率(いわば外れ率)なので、すべての帰無仮説が成立する確率は、
各々独立の事象だから0.95(=1−0.05)の60乗で、0.05となる。少なくと
も1回は帰無仮説が否定される確率は1−0.05= 0.95である。つまり、60項目
のうちいくつか有意になっても不思議ではない。

本を修正なさるということなので,急ぎ,コメントさせていただきます。

まず,細かいところでは,「帰無仮説が成立する確率」という表現が引っか
かりました。このままだと「帰無仮説が真である確率」のようにも読めてし
まいます。「帰無仮説が採択される確率」とするか,あるいは,その後の
「帰無仮説が否定される確率」という表現と対応させて「帰無仮説が肯定さ
れる確率」とするかしたほうがよいのではないでしょうか。

それから,60回の検定結果がどうなるかが「それぞれ独立の事象」である
と書かれていますが,同じ被験者について項目を変えただけの検定の結果は
互いに独立にはならないと思います。そのため,独立性を前提とした計算は
成り立たないように思います。

この部分,「「心理テスト」はウソでした。」のモードであれば,以下のよ
うな説明もよいのではないかと思いました。「ここではカイ自乗検定を60
回も繰り返した。1回の検定は5%の危険率(いわば外れ率)であり,単なる
偶然によっても20回に1回は,有意な結果が得られるという仕組みになっ
ている。この研究では60項目のうち3項目が有意になったということだか
ら,血液型人間学が成り立たないときに,単なる偶然によって有意な結果が
出る割合とちょうど一致している。つまり,この結果は,「血液型人間学は
正しくない」という仮説とぴったり合った結果と言える。」

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南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp



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