[fpr 2791] 「心理テスト」はウソでした。

堀啓造

堀@香川大学経済学部です。

 「心理テスト」はウソでした はなかなか面白い本ですね。いろいろ参考にさせてもらいました。

YG検査の記述について2つ疑問があります。
(1)YG検査はもともとParcelをもとにしたテストではないでしょうか。
 ParcelingはCattell(1956)が提案した方法で、最近でも雑誌Structural Equation Modelingにお
いて活発に議論されているものです。以前にfpr でも紹介した論文([fpr 2629] parceling 概念の
使用)がありますが、Todd, et al(2002)あたりがいろいろ賛否両論を紹介しています。これだと因
子分析を前提にしなくてもとりあえずかまわないはずです。

 Comrey(1961)がもうちょっと精緻な方法を提案してます。Comrey の因子分析テキストの初版(日
本語訳)ではなかったようですが、第2版では紹介してますComrey & Lee,1992)。
 因子のような扱いをするのなら、最低限信頼性程度は欲しい。これは満たしている。

 Comrey の議論は性格の質問項目をそのまま因子分析してもごちゃごちゃになる。また、2値デー
タの因子分析もきれいにきまらない。このことから論理的に因子になるはずの項目を集める。これ
をすべての因子の項目をまとめて因子分析せず部分的に因子分析をして因子性を確かめる。という
論理と経験をふまえて因子を決めて、因子ごとの合計点を因子分析する。通常の2次因子。先験的
なparcel でないのがComrey の方法(FHID)。
 今は順序尺度の場合の因子分析もいくつか考えられているのでそれを利用するという方法もあり
ます。

 プロフィールに使っているのは少し問題だけど、昔のレベルとしては許せるものだと思われま
す。

(2)そのまま因子分析したものが反例になるのか?
 YG検査は3値型データなのでこれを得点化したものをそのまま因子分析しても、きちんとした因
子がでているとは限らない。萩生田・繁桝(1996)から4値データまでの順序尺度データの因子分析
は反応頻度によるバイアスが生じる。このことから3値データの因子分析の結果はダメな可能性を
示唆しているが、直ちに反証というわけにはいかない。

(3)竹井機器工業株式会社への要望
データのコンピュータ分析を請け負っているのだから、かなりのデータが集まっているはずであ
る。データの2次利用を許可をとって、現代的な分析に掛けるべきではないのか。
http://www007.upp.so-net.ne.jp/tkk/product/personality/psn1401.htm
を見たら、コンピュータ診断をやっていないようですね。

(4)改めて辻岡(1979)を読んでみて、肝心のことがきちんとされてないことに気づきました。彼の主
張だと基本的に2因子だということになります。ところが、2因子をきちんと論証していないので
す。それで分析してみました。

Guilford性格検査のデータがあるので分析すると、MAP 2, 対角1平行分析2、対角SMC平行分析
95、固有値1基準3となります。5因子解、6因子解はMLでは不適解です。堀(2005)から2〜5で
すが、2因子解がもっともきれいな解になります。対角1平行分析が一番良い予測をする可能性が
高いことからもこれがベストでしょう。
《Guilford性格検査因子分析》
 Promax rotated factor pattern matrix, Communality and Unique variance			
	
 (Power = 3)
=============================================================				
		1	  2	
=============================================================				
4	C	 0.990 	  0.152 	 0.903 
3	N	 0.919 	- 0.122 	 0.934 
10	N	 0.793 	  0.072 	 0.595 
11	O	 0.776 	- 0.075 	 0.647 
9	I	 0.688 	- 0.242 	 0.644 
2	T	 0.585 	- 0.102 	 0.392 
13	Co	 0.539    0.103 	 0.264 
12	Ag	 0.480 	  0.206 	 0.207 
8	M	 0.366 	  0.035 	 0.127 
---------------------------------------------------
5	R      - 0.152 	- 0.867 	 0.687 
1	S	 0.327 	- 0.745 	 0.823 
6	G      - 0.370 	- 0.733 	 0.494 
7	A	 0.210 	- 0.692 	 0.618 
===================================================
一方YG検査の古いバージョンの相関行列(Mを含む)もあるので分析すると、MAP 2, 対角1平行分
析2、対角SMC平行分析95、固有値1基準3となります。Guilfordと同じ結果。ML不適解は3,4,
5因子解。
《YG検査old因子分析結果》
===================================================
 Promax rotated factor pattern matrix, Communality and Unique variance			
	
 (Power = 3)				
===================================================
	1	2	
===================================================
4	C	 0.840    0.239 	 0.619 
3	D	 0.781 	- 0.157 	 0.722 
10	N	 0.778 	- 0.059 	 0.642 
11	O	 0.752 	  0.106 	 0.520 
9	I	 0.687 	- 0.172 	 0.585 
13	Co	 0.655 	  0.140 	 0.383 
8	M	 0.582 	- 0.089 	 0.384 
2	T	 0.229 	- 0.228 	 0.141 
-------------------------------------------------------
5	R      - 0.233 	- 0.753 	 0.496 
7	A	 0.175 	- 0.729 	 0.653 
1	S	 0.159 	- 0.716 	 0.619 
6	G	 0.281 	- 0.689 	 0.692 
12	Ag     - 0.274 	- 0.532 	 0.254 
===================================================
Agの因子が英語圏と日本とでは違っている。また、英語ではM(男性性)がどちらとも言えない尺度
であったのが、日本語ではT(思考的内向)がどちらとも言えない尺度になっている。いずれにして
も2因子構造である。

YG検査でGRTAS を向性としてまとめているが、これはたくさん集めているデータの相関行列からき
ちんと示す必要がある。また、情緒安定性(DCIN), 社会適応性(OCoAg)を別因子としているのにタイ
プ分けではDCINOCoとまとめている。Agも向性側に入っている。これらの点をまともに立証していて
いないのに上の因子分析と一致しているのはどうして。この本には載っていないところで、なんら
かの形で2因子解を求めたとしか考えられない。

辻岡(1979)はYG検査のマニュアルとしては実にいい加減で、きちんとYG検査の存在理由を証明して
いない。しかし、信頼性やここで分析したことからそれなりに有効性はあるものと考えられる。た
だし妥当性についてはこの本以外にチェックする必要性がある。

なお、辻岡は第1次因子として7因子を求めているが、意味のない結果であろう。2次因子として4
因子を求めているがこれも意味のない分析であろう。このような意味のない分析に多くが費やされ
ているのが辻岡(1979)でなり、人の煙に巻くために書いたとしか思えない。まっすぐになぜ2つに
分割するのかを説明しなければならない。

(5)この本の主力は、リッカート尺度としてパーセント点をきっちり求めたということにありそう
だ。今となってはそれはほとんど意味のないことのように思えるが。検査の判定に使っているので
利用はされていても、いまや平均点と標準偏差が分かっていればだいたいの対応のつくことであ
る。


Cattell, R. B. (1956). Validation and intensification of the sixteen personality factor 
questionnaire. Journal of Clinical Psychology, 12, 205-214.

Comrey, A. L. (1961). Factored homogeneous item dimension in personality research. 
Educational and Psychological Measurement, 21, 417-431.

Comrey, A. L., & Lee, H. B. (1992). A first course in factor analysis (2nd ed.). 
Hillsdale, NJ: Lawrence Erlbaum

堀 啓造(2005) 因子分析における因子数決定法──平行分析を中心にして── 香川大学経済論叢
第77巻第4号,545-578.
    http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/yomimono/factor2005.pdf

萩生田 伸子・繁桝 算男 順序付きカテゴリカルデータへの因子分析の適用に関するいくつかの
注意点 心理学研究,1996,67,1-8

Todd D. Little, William A. Cunningham, Golan Shahar, Keith F. Widaman(2002).
To Parcel or Not to Parcel: Exploring the Question, Weighing the Merits
Structural Equation Modeling: A Multidisciplinary Journal, Vol. 9, No. 2: pages 151-173.
http://www.leaonline.com/doi/abs/10.1207/S15328007SEM0902_1

辻岡美延(1979) 新性格検査法ーY-G性格検査実施応用研究手引き 日本・心理テスト研究所

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堀 啓造(香川大学経済学部)e-mail:  hori (at) ec.kagawa-u.ac.jp
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