[fpr 2808] Inference by Eye

南風原朝和

fprの皆様

南風原@東大教育心理です。

Keizo Hori さんからの引用:

> 堀@香川大学経済学部です。
> 
> Cumming, Geoff; Finch, Sue
> Inference by Eye: Confidence Intervals and How to Read Pictures of Data.
> American Psychologist. 2005 Feb-Mar Vol 60(2) 170-180
> http://content.apa.org/journals/amp/60/2/170
> 
> という論文がでています。グラフに95%CIをつけて見た目で有意性をみようというものです。良く読む
> と個人間要因でないと有効ではないのでちょっとがっかりです。この方面の研究が最近進んでいるよ
> うなのでチェックしてもいい論文でしょう。SEを使ったときの見方についても触れています。


見てみました。新しい進展というより,信頼区間についての非常に読みやすい入門的
解説という感じですね。

信頼区間の図を見て差の有意性を判断するというのは,結局は検定に戻ることになる
ので,信頼区間をもっと利用しようという本質的な理由からすると,ややずれた話で
あり,そのことは著者も認めています。

この論文の教育的な意義としては,たとえば,「2つの群の平均値について,それぞ
れ 95%信頼区間が描かれているとき,それらの区間が重ならないことと,2つの平均
値の間に 5%水準で有意差があることがイコールである」というのが誤解であるとい
うことを指摘している点が挙げられるでしょうか(基本的なことであり,オリジナル
な指摘ではありませんが)。

その誤解は,仮に「群間の平均値差の信頼区間の長さが,各群の平均値の信頼区間の
長さのちょうど2倍である」なら,誤解でなく正解となります。しかし実際には,
「群間の平均値差の信頼区間の長さは,各群の平均値の信頼区間の長さの約√2倍に
すぎない」ので,2つの平均値がそれぞれの信頼区間が重ならないほどに離れていな
くても,平均値差が有意になる(平均値差の信頼区間がゼロを含まない)ことは十分
あるということです。(この文章では伝わりませんね。上記論文の図をご覧ください。)

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南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp



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