[fpr 2827] 臨床心理士のスクールカウンセラーとしての有効性について

長谷川芳典

<200506091644.AA03118 (at) computer.educhan.p.u-tokyo.ac.jp> の、
   "[fpr 2825] Re: 臨床心理士のスクールカウンセラーとしての有効性について" において、
   "ichikawa (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp (市川伸一)"さんは書きました:

> Tomokazu HAEBARA さんは書きました:
> >まず,サンプリング(調査対象)についてですが,都道府県・政令指定都市,
> >あわせて59自治体に対する全数調査とのことでした。そのうちデータに不備の
> >あった1自治体を除き,58の自治体を,
> >(A) 臨床心理士のみを配置する自治体(27自治体)
> >(B) 臨床心理士に準ずる者を原則通り30%以内で配置する自治体(20自治体)
> >(C) 臨床心理士に準ずる者を30%以上配置する自治体(11自治体)
> >の3群に分けて,平成13年度から14年度にかけての問題行動件数の減少率を比
> >較しています。その結果,配置校における問題行動件数の減少率が,
> >(A)11.7% < (B)16.8% < (C)30.4% となったということです。

【中略】
> 
> 市川です。これは、批判的思考の問題としては、おもしろいデータですね。
> ここから、「臨床心理士はスクールカウンセラーとしてたいして役に立たない。
> 準ずるものを雇ったほうがいい」という結論を引き出していいか、どんな可能
> 性がありうるか、さらにどういう分析をしてみるべきか、というのは、大学院入
> 試問題になりそうです。(臨床心理士の大学院で出すとしゃれになりませんが。)
> 

今回、南風原さんから知らせていただいたデータだけに基づいて

●臨床心理士ではなく、「準ずる者」のほうを雇ったほうがいい

と結論することはかなり乱暴でしょうねえ。

しかし、
fpr2813:
http://mat.isc.chubu.ac.jp/fpr/fpr2005/0084.html
にも述べましたように、ここで重要なのは

●スクールカウンセラーとして臨床心理士を優先的に採用することが妥当か
●臨床心理士と、そうで無い者とのあいだに時給の格差をつけることは妥当か

という議論です。つまり、

●確かな証拠無しに、優先的な採用や時給格差をつけるべきでない

という議論から出発する限りにおいては、今回のデータに基づいて

●優先的な採用や時給格差をつけるべきだということを積極的に支持する結果は得られなかった

と判断することは妥当であると考えます。

また、行政側の対応としては、臨床心理士だけに高額の時給を支払う根拠が見あたらないわけですから
結果的に、高額の時給を支払う必要の無い「準ずる者」をたくさん雇うことになっても
それはやむを得ないことでしょう。

ま、そうは言っても、無原則に誰でも採用してよいということにはなりません。
やはり、市川さんがfpr2814でお書きになった

●スクールカウンセラーに必要な要件とは何か

について、既得権や既成事実に拘ることなく真摯に検討をすることが求められていると思います。

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Y.Hasegawa/長谷川芳典
岡山大学文学部心理学教室
公用サイト http://www.okayama-u.ac.jp/user/le/psycho/member/hase/h0u.html
予定表 http://calendar.yahoo.co.jp/hasep2004
私設Web日記 http://www.geocities.jp/hasep_diary/WELCOM.HTM



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