豊田秀樹@早稲田大学です >fprの皆様 >豊田さんの >> 連立方程式 統計モデル >> A.不能 −> 識別される >> B.解ける −> 識別される(飽和モデル) >> C.不定 −> 識別不定 >の図式に関してですが,SEMでの連立方程式は,以下の2つのレベルに分けて >考えることができると思います。 > レベル1:共分散構造に関する方程式 > 例:Cov(yj,yk) = Σg βjgβkg > レベル2:最適化に関する方程式 > 例:dL/dβjg = 0 >このとき,同一のモデルに関する方程式が,レベル1では(母数の数が方程 >式の数より少ないために)不能であるが,レベル2では(必要な制約が欠け >ているために)不定になるという場合があると思います。一方,レベル1で >不定であれば,レベル2でも不定のままです。 >豊田さんの図式は,レベル1の方程式に関するもののように思われますが, >モデルが識別できるかどうかは,直接的にはレベル1ではなく,レベル2の >方程式における不定性と対応するのではないでしょうか。 もちろんレベル1が「連立方程式」で,レベル2が「統計モデル」です. 探索的因子分析モデルのように,レベル1では不能であるが,レベル2では不定 になるという場合が存在することは,その通りですが,SEMの世界では どちらかというと例外の部類なので,話を単純にするために1通目では 書きませんでした.南風原さんの2通目流に書き直すと レベル1 レベル2 A.不能 −> A1識別される A2識別不定(まれに) B.解ける −> 識別される(飽和モデル) C.不定 −> 識別不定 となります(理論的には解が有限個の場合やその他にも書き足すべきことは ありますが,とりあえずです).南風原さんの1通目は「不能」を不可能に相当 する日常用語としても使用なさっていますが,考察が進んだ2通目では,もはや 「不能」も「不定」も数学的意味としてしか使っていません.そういうもの ではないでしょうか. 「SEMの識別問題とは何だろう」と初学者が正しく理解したり,専門家がまじめに 考えるためには,ある場所では専門用語として使用し,ある場所では日常用語として 使用し,混ぜて用いたのではダメで, 不能:解が1つもない 不定:解が無数にある(あるいは複数あり,本質的に1つに定まらない) のように1つの言葉には1つの意味だけを与えるようにすべきです.1つの領域で 1つの言葉に2つの意味を与えたら思考・理解が阻害されます.
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