堀@香川大学経済学部です。 この夏みなさんいろいろ本をだされて、それなりに楽しませていただいてます。 書評」足立浩平『多変量データ解析法─心理・教育・社会系のための入門』ナカニシや出版 寄贈していただきました。この本はモデルについてしっかり考察しているのですが、それをわかりやす く具体例で示し、一般モデル式のように抽象化しません。しかも変数名が具体的日本語になっていたり します。 また、Σと∫とかの高校の数学記号は使いません。高校数学は崩壊してますね。 名大の授業の「統計分析」 http://ocw.nagoya-u.jp/sis/c02/index.html の講義ノート http://ocw.nagoya-u.jp/sis/c02/lecturenotes.html を見ると高校数学をちゃんと勉強した学生にはこんな風に勧めることができるんだとおもわず感動して しまいました。うちの学生だとΣをだすだけで拒絶反応がでます。曲線と微分の関係なんかないですよ ね。ベクトルもいまいちだし。そういうふうに考えると、この本はいい割り切り方をしてます。 多変量解析の並べ方もなかなか斬新です。 目次 http://ocw.nagoya-u.jp/sis/c02/lecturenotes.html 1章の基本統計法はいいとして、 2章にクラスター分析です。おそらく、モデルと距離行列の関係がわかりやすいため、イメージづくり のために最初にもってきたのでしょう。多くの本は後ろのほうに来ます。 3章主成分分析(その1)〜10. 構造方程式モデリング(その2)までるモデリングです。モデルの話の中 心です。ここで現在の多変量解析の中心であるモデリングをしっかり身につけます。 11章 探索的因子分析(その1) 12章 探索的因子分析(その2)と主成分分析(その2) 「確認的因子分析」よりも後に探索的因子分析が来ます。モデルからみると探索的因子分析はこんなに やいこしいの。わざとやいこしくしているんじゃないの。ちょっと面白いです。 15章 判別分析 で仲間外れのようです。分析するイメージとしては判別分析のほうがわかりやすいように思える。 付録 使用したソフトウェアと手順の概略 でソフトにも注意を払ってます。 1章は基本的にモデル→図解と説明→出力の基本用語→注意 のようになってますが、章によって違います。 全体としてはコンパクトにまとめていて、最初の数章は読むのに楽だと思ったのですが、コンパクトな ためだんだんと疲れてきました。 15回の講義つまり2単位の想定ですが、1回1章進めると学生はかなり大変そうです。1〜12章ま でやるのが統一性をもててよさそうです。講義では、演習課題を与えないといけないようです。 ちなみにうちの学生なら因子分析だけで10回あればなんとか格好のついた因子分析をやってくれま す。1,2回ですっ飛ばすとなかなか使うところまでいきませんし、テストも惨め。 元に戻って、このテキストは大学院生の自習用としてはかなりいいできだと思います。学部生用に作っ たものでしょうが、さきほどいった12章までを理解すればすばらしい。もちろん大学院にいくような 学部生にもお勧めします。 ---- 堀 啓造(香川大学経済学部) home page http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/
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