[fpr 3078] 臨床心理と統計学は本質的には同じ

toyoda (at) waseda.jp

豊田秀樹@早稲田心理学教室です

実在の人物ではないけれど「Dr.コトー診療所2006」のコトー先生 
は心理臨床家としても第1級であり,現象学的に人を了解し,適切 
な言葉かけをするので,そのアドバイスはクライエントの心に染みる.
(話はそれるが,昨日の時任三郎と泉谷しげるの演技はすごかった.
家族と見ていなければ大泣きしていたと思う)しかし,それは確か
な医療技術を身につけているからこそであり,技術もないのに天才
的な心理的「了解」を示しても,それこそ魚労長(泉谷)に「ばか
やろう.お前なんか,この島には,いらねえよ」と言われるのがオ
チである.

私が尊敬する株式投資家に武田和平という人がいる.彼は不良少年
に対する指導でも知られている.しかし彼は投資家・実業家として
超1流であり,タマゴボーロという日本人なら誰でも知っているお 
菓子の創始者でもある.それがない只のおじいちゃんなら,いくら
人の気持ちを「了解」できる臨床能力があっても,不良たちと分か
り合うのは難しいと思う.ボコられて終わりではないだろうか.

「了解」によるカウンセリング的アプローチは,それだけでは無力
であり,何か社会のニーズを有する確かな技術と結びついて初めて
効果を発揮する,fpr流にいうと,単独の主効果は期待できない
けれども,交互作用の効果が大きいのだと思う.

その意味で,教員養成系の大学では,教授法・授業分析法・指導案
作成法など現実社会の確かなニーズを有する教員資格結とびついて
いたから,教員を目指しながら同時に大学・大学院で心理臨床を学
ぶことはシステムとして大変安定していたと思うし,心理臨床は効
果を発揮できた.しかし15年ほどまえに,人口動態の関係で教員が
いらなくなり,ゼロ免と称するコースを嚆矢として心理臨床を主役
とする募集単位が増えて,心理臨床の主効果が期待されるような場
面が増えてきたことがいろいろな軋轢の本質だと思う.(本当は団
塊の世代が現役を退き,教員の人材が必要な,今こそ,教員養成の
本格学部の定員増が必要なのに,そうはならない.行政は常に後手
後手である)病院や,学校のカウンセラーは,心理,を前面に出さ
なければいけないから辛い.同じこと言われるなら,コトー先生や
武田社長に言われたい.心理だけじゃあ「ばかやろう.お前なんか
この**には,いらねえよ」と言われかねない.ナウシカは「人は
森を離れて生きられない」と言ったが「心理臨床は固有技術から離
れては生きられない」だろう.でもそれは統計学だって同じだ.
「統計学は固有技術から離れたら生きられない」自分の繰り出した
パンチが自分に当たったところで,お後がよろしいようで


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