明けましておめでとう御座います。 岡本安晴@日本女子大学心理学科です。 新年早々、豊田さんの正論に触発されました。 レスも今私のメールソフト(Nifty経由)では2通確認できました。 > 1つの理由は,上述したように,健全な追試の雰囲気を作りたいからです. 全くその通りだと思います。しかし、少し意見を異にする箇所もありますので、 それも含めてちょっと日ごろ思っていることを追加させて頂きます。 まず、意見を異にする箇所というか疑問ですが > (注2)尺度とは,反応データから受験者に数値を割り当てる規則です.何千人 > もの受験者から求めた標準化のための統計量には著作権があると私は考えます. 「著作権がある」と書かれた趣旨が不明ですが、使用において著作権者の 許可が必要という意味なら疑問があります。例えば理科年表に掲載されている 重力定数やアボガドロ数などの定数はそれなりの労力の結果ですし、理論や 技術の進歩に伴って更新されていく性質のものです。これらの使用において 著作権の許可が必要かどうかということは問題になっていないのではと思います。 もちろん、統計量の使用においてその統計量の報告者あるいは文献等に 言及することは当然のことと思います。 著作権の問題も、社会的合意の問題で、いろいろな要因のバランスの上に 形成されるものですが、ここでは公共の利益と著作権者の不利益という観点から 主に学会誌に掲載されたものの追試等の場合について考えてみます。 公共の利益の方は、追試等は公共の利益になりますので、この場合は著作権は 制限されると考えるべきだとなります。 著作権者の被る不利益の方は、利用者による当該の質問紙の使用によって著作権者が 得られたはずの利益を失したということですが、追試の場合はその質問紙を販売する ことによって利益を得るという行為ではないことがまず指摘されねばなりません。次に、 追試者が質問紙の使用のために払うべきであったとする使用料を著作権者が得て いないという点ですが、これは追試等による公共の利益という観点から考える必要が あると思います。追試者の得る利益は学会への貢献ですが、このことにより 著作権者への使用料支払い義務が生じると考えることには無理があると思います。 著作権者も当該の質問紙が取り上げられたという評価という利益が得られ、 それが使用料に代わる利益と考えられます。追試等に限定した使用であれば、 著作権者の権利は制限されると考えるのが妥当と思います。 なお、日本心理学会の場合、掲載論文の著作権は日本心理学会に 属するとなっています。この場合は、論文に掲載されている尺度の著作権も 学会にあると考えるのが妥当だと思いますが、どうでしょうか?したがって、 許可をとる場合は心研に掲載されているものについては日本心理学会に 許可を求めるのが適切だと思います。実際には許可というより届出と いうことになるのでしょうが。そして、学会は届出の出来ればデータベースを 用意して、定期的に届出件数などを公表する。届出者の使用結果も質問紙別に 報告を受けて掲載する。そうすると後で利用する人たちもそのデータベースを 参考にすることができます。 日本女子大学心理学科 岡本安晴
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