岡本@日女大です。 昨年のある学会で、テスト得点と目的とする指標との相関係数の 目標値が0.3であるのは低過ぎないかと質問したことがありました。 そのときのグループを率いていらっしゃった指導教授のお答えは 「この領域ではこんなもんだ。何とか先生のお墨付きもある」 というようなものでした。正確な言い回しは忘れました。 科学的事実に関することで何とか先生のお墨付きもないものだ と思いましたが、相関係数が0.3ですと、説明率は9%で、散布図を 見てもぼやーとしていたのでは関係はわかりません。 I. J. Deary, 2001. "Intelligence: A very short introduction",Oxford のFig. 24 (p. 96)には、いろいろなテストと仕事遂行量との相関係数が 載っています。多いものは0.5以上あります。 相関係数が0.5なら説明率は25%で上の9%よりはるかに実用性が あるという感じがします。 9%で実用上問題がないというのは、散布図を眺めていると 何か胡散臭く思います。 私学に移ってからは毎年多数のテストと目的とされている指標との 相関などを見ることになりました。学問としては相関が0でないというだけで 何か示唆を得ることもあるでしょうが、散布図では関係が分からないような 低い相関係数の結果に基づいて、実生活でのことを判断されてはたまらない という気がします。 日本女子大学心理学科 岡本安晴
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