[fpr 3135] 相関係数の壁:0.3?

psycho01 (at) edu.u-toyama.ac.jp

"Yasuharu Okamoto" <yasuharu.okamoto (at) nifty.com> さん


だいぶ、反応が遅くてすみません。遊びすぎで、頭がぼんやりしています。


Schmidt, F.L. and Hunter, J.E. \ \ 1998 \ \ The validity and utility 
of selection methods in personnel psychology: Practical and 
theoretical implicztions of 85 years of research findings. {\it 
Psychological Bulletin}, 124, 262-274.

85年間の研究をメタ分析。515の職業、被験者総数32000名という大
規模な分析。

\begin{table}[htbp]
\caption{勤務成績についての予測的妥当性}

\begin{tabular}{lr} 
選抜方法 &      妥当性 \\
\hline 
知能テスト          & 0.51 \\  
構造化面接          & 0.51 \\
自由面接        & 0.38 \\
実際の仕事テスト    & 0.54 \\
仕事の知識テスト    & 0.48 \\
見習い期間の仕事テスト  & 0.44 \\
行動の一貫性評価    & 0.45 \\
仲間の評価          & 0.49 \\
統合テスト          & 0.41 \\
良識性(勤勉性)      & 0.31 \\
自伝的データ        & 0.35 \\
アセスメントセンター    & 0.37 \\
紹介状のチェック    & 0.26 \\
仕事の経験年数      & 0.18 \\
過去に受けた訓練や経験の得点化      & 0.11 \\
教育年数        & 0.10 \\
興味            & 0.10 \\
筆跡            & 0.02 \\
年齢            & --0.01 \\
\hline 
\end{tabular}
\end{table}



二村英幸・今城志保・内藤淳 \ \ 2000 \ \ 管理者層を対象とした性格検査・
知的能力検査の妥当性のメタ分析と一般化。組織行動科学, 13, 159-167.


管理者適性検査NMATを管理者選考場面や研修場面で用いている企業22社、
全1952名のデータを元に、職務遂行能力評価を基準にした妥当性のメタ分
析。

妥当性係数を見ると、概念的理解は0.20、論理的思考は0.27、総合で
も0.26とかなり低い。職務遂行能力評価という基準の信頼性を0.60と
見なして補正した数値で、補正前の数値は0.14、0.19、0.18とか
なり小さい。

NMATの予測的妥当性は最大で0.25〜0.30の間と推定される。アメ
リカの0.51と比べると、かなり見劣りする。二村らは、この原因を日本で
はまじめさや意欲・気配りを重視する傾向があるからだと説明している。


しかし、私は、NMATの一般的知的能力検査が一般知能gの測定に失敗して
いる考えています。よくこんなテストにお金を払っているなと関心します。人
事部の頭を疑わざるをえません。

-----「知能はどこまで分かったか」(仮題)日経BPに書いた一部です。

http://psycho01.edu.u-toyama.ac.jp/intelligence_contents.pdf



予測という観点では、妥当性係数が0.3では困りますね。この辺りのことを
書いたのが「心理テストはウソでした」です。

しかし、保健医学などでの調査等では妥当性係数が0.1であっても、例えば、
ある種の食品の摂取の有無が死亡率に有意な影響があれば、医療にかかる費用
や社会的な損失は重大ですので、意義があることになります。この辺りは議論
が複雑になるので、どこにも書いていません。






> 岡本@日女大です。
> 
>  昨年のある学会で、テスト得点と目的とする指標との相関係数の
> 目標値が0.3であるのは低過ぎないかと質問したことがありました。
>  そのときのグループを率いていらっしゃった指導教授のお答えは
> 「この領域ではこんなもんだ。何とか先生のお墨付きもある」
> というようなものでした。正確な言い回しは忘れました。
>  科学的事実に関することで何とか先生のお墨付きもないものだ
> と思いましたが、相関係数が0.3ですと、説明率は9%で、散布図を
> 見てもぼやーとしていたのでは関係はわかりません。
> 
>  I. J. Deary, 2001. "Intelligence: A very short introduction",
Oxford
> のFig. 24 (p. 96)には、いろいろなテストと仕事遂行量との相関係数が
> 載っています。多いものは0.5以上あります。
>  相関係数が0.5なら説明率は25%で上の9%よりはるかに実用性が
> あるという感じがします。
>  9%で実用上問題がないというのは、散布図を眺めていると
> 何か胡散臭く思います。
> 
>  私学に移ってからは毎年多数のテストと目的とされている指標との
> 相関などを見ることになりました。学問としては相関が0でないというだけ
で
> 何か示唆を得ることもあるでしょうが、散布図では関係が分からないような
> 低い相関係数の結果に基づいて、実生活でのことを判断されてはたまらない
> という気がします。
> 
> 日本女子大学心理学科
> 岡本安晴
> 
> 
> 




                              --------------------------------------

                                                           村上宣寛

                                           〒930-8555 富山市五福3190
                                               富山大学人間発達科学部
                                             TEL/FAX 076-445-6367
                           HP:http://psycho01.edu.u-toyama.ac.jp/
                              --------------------------------------


スレッド表示 著者別表示 日付順表示 トップページ

ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。