[fpr 3183] 授業内レポート

豊田秀樹

豊田秀樹@早稲田大学心理統計学です

fprの皆様

私は文学部の学生に,統計学の講義をすることを生業としています.
文学部の学生に限らず文科系の学生さんに統計学を講義するのは
動機を維持させるのがたいへんな場合もあります.そこで私は今年から
授業内レポートというシステムを導入しました.たとえば90分の授業は
以下のようにタイムテーブルを組みます.

15分間 講義1
 5分間 授業内レポート配布・執筆開始(出欠確認)
15分間 講義2
15分間 先週の授業内レポートのよい例・悪い例の紹介
25分間 講義3
15分間 授業内レポート執筆(隣同士相談可)
          提出

授業内レポートの課題は例えば,回帰分析なら
「教科書の例以外で,単回帰分析でこんな変数を予測したら,
さぞ面白いだろうなと貴方が思う分析の例を1つ挙げてください.」
という発散的な課題を与えます.

あるいは,分散分析なら
「条件差による平均値の差(たとえば季節の違いによる濃度の差)
を確認したい場合に,平均の差だけを直接的に考察していたので
は不十分です.平均の差を確認するために,どうして散らばりを
考察するのですか? 300字以上で,できるだけ貴方自身の言葉で,
分かりやすく説明してください.」
という課題を与えたりします.

学生の集中力は15分で,ヒトツの限界を迎えますので
こまかく区切って講義すると,飽きないで聴いてもらえます.
また

「先週の授業内レポートのよい例・悪い例の紹介」をすると
1.前回の内容の想起することができる
2.一部であってもフィードバックが来るので,来週はほめられるように
  がんばろう.あるいは匿名であっても悪い例に挙げられないように
  頑張ろうと思うようです.
3.書きっぱなしではなく,正解がナンであったかわかる.
などのメリットがあります.

「授業内レポート執筆」をすると
1.早くできて先に提出する学生と,ちょっとした無駄話ができて
  学生との交流が生じる
2.代返のしにくい出席カードの代わりになる
3.レポートを書くという能動的な行為をするため,授業を真剣に聞くようなる
4.こちらが考えている大切な部分を学生にアピールできる
5.答えが1つに定まらない,発散的な思考も鍛えることができる.

「授業内レポート」を読むと
自分の教え方がどこが良いか,あるいは悪いかが判る.
こちらが易しいと思っている専門概念が,以外に学生とって
難しかったり,その逆であったりするという事実を発見できる.

とまあ,書きなぐってしまいましたが,授業の中でレポートを
書かせるという試みは,統計学の講義にはかなり有効であると
感じている今日この頃です.



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 TOYODA Hideki Ph.D.,  Professor,                    Department of Psychology
 TEL +81-3-5286-3567  School of Letters, Arts and Sciences, Waseda University
 toyoda _atmark_ waseda.jp   1-24-1 Toyama Shinjyuku-ku, Tokyo 162-8644 Japan
 http://www.waseda.jp/sem-toyoda-lab/
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