[fpr 3304] 標本平均の分布が母集団の分布と同じであるのは、正規分布の他にどんな場合ですか?

南風原朝和

fprの皆様

南風原@東大教育心理です。

三好さんから提起された問題に関連して,以下,補足します。

コーシー分布(自由度1のt分布)からの標本の平均がコーシー分布に
従う,ということですが,このことは,Nに関係なく成り立ちます。つ
まり,この場合,Nを大きくしても,標本平均の分布は正規分布には近
づかないということです。

すると,統計の本に書いてある「Nを大きくしていくと,母集団分布の
種類に関係なく,標本平均の分布が正規分布に近づいていくことが数学
的に証明されています。」という「中心極限定理」と矛盾が出てきます。

これは,後者の記述が厳密な記述でないためであり,正確に書くなら
「母集団分布に関係なく」ではなくて「ごく一部の例外を除き」とする
か,中心極限定理が成立するための条件(母集団分散が有限であること)
を明記するかすべきところです。

(上記の“統計の本に書いてある”の引用は拙著『心理統計学の基礎』
の110頁。今度,手直しをしておきます。)


南風原朝和 からの引用:

> 三好様,fprの皆様
> 
> 南風原@東大教育心理です。
> 
> コーシー分布(自由度1のt分布)が下記の性質をもっている
> と教わったことがあります。
> 
> 
> Hiroto Miyoshi <hiroto_miyoshi (at) nexyzbb.ne.jp> さんからの引用:
> 
> > こんにちは。ちょっと教えてください。
> > 母集団が正規分布の場合、その母集団からの標本の平均も
> > 正規分布しますね。同じように、母集団の確率分布とその
> > 母集団からの標本平均の確率分布が同じ形である場合が
> > 他にも、特例としてあると聞きました。
> > それはどんな場合ですか?
> > 
> > なお、その記述は、「完全独習 統計学入門 小島寛之著
> > ダイヤモンド社」の134ページに「標本平均の分布が、母平均の
> > 分布(たぶん「母集団の分布」の誤植)と同じ形のままであると
> > いう性質は正規分布と一部特例を除けばほとんど成立しません。」
> > という部分です。
> > 
> > この特例について教えていただけたらと思います。
> > よろしくお願いします。
> > 
> > 敬具
> > 
> > -- 
> > --------------------------------------
> > Hiroto Miyoshi
> > 三好弘人
> > hiroto_miyoshi (at) nexyzbb.ne.jp
> 
> ----
> 南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp

----
南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp


スレッド表示 著者別表示 日付順表示 トップページ

ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。