守さん 柴山です。 本来測定したい能力分布(ないしもっと一般的に心理学的特性の分布)と 検査なりテストなりを経て産出される素得点分布とをまず区別する 必要があります。 顕在変量としての素得点分布の性質は、いわば測定装置としての テストの性質ともとの能力分布(これはあくまでも仮定されたも のですが・・・)の性質との関連で決まってくるものです。 したがいまして、たとえ、もとの能力分布に正規分布を仮定できても テストの性質によっては素得点分布の形がさまざまに変化してきます。 極端なことを言いますとテストの信頼性係数が非常に低い場合には 素得点分布が正規分布状になります。もともと正規分布は誤差の分布 と関連が深いですから当然といえば当然の結果です。ですので 素得点分布が正規分布状になっているから「良いテスト」とはいえない ことになります。 T得点が使われるのは「本来、正規分布するはずだから」という 理由(そういう理由もあり得るとは思いますが)ではなくて、 素得点分布を正規分布型に変換しておくことで T得点の値自体に相対的な位置情報を持たせるためです。 これはT得点に限らず、標準得点といわれるものに共通の目的と 考えていいかと思います。要するにその標準得点の平均と 標準偏差がわかれば、たとえば2σ分平均より高い位置の 得点なら、標準正規分布にもっていって上から2.3%に位置すると いうことがすぐにわかるようにするためです。 ---柴山
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