[fpr 3457] 偏相関比について

南風原朝和

fprの皆様

だいぶ前に,末尾に貼付したやりとりが堀さんとの間であり,“partila η”
を「偏イータ」と呼ぶのは美しくないので,「偏相関比」と呼ぼうと
提案しました。

最近,効果量のことを考えていてそのことを思い出し,少し気になって調べ
てみたら,Karl Pearson が1915年の Proceedings of the Royal Society 
of London. Series A に“On the Partial Correlation Ratio”という論文
で偏相関比を論じていました。それが,堀さんが紹介した“partila η”
と同じかというと,同じ場合も違う場合もあります。

A×B の2要因デザインの場合,Pearson の定義によれば,要因Aの影響を除
いたときの要因B(と従属変数と)の偏相関比(の2乗)は,要因Aでは説明
できない分散の何%を要因Bの追加で説明できるかを示すものです。これは
偏相関係数(の2乗)と同じ性質であり,岩原信九郎「新訂版 教育と心理
のための推計学」の401頁にもそのことを示す式があります。

このとき,「要因Bの追加」によって,効果の種類としてはAの主効果,Bの
主効果,A*Bの交互作用効果の3種類となり,上記の式は,そのうちBの主効
果とA*Bの交互作用効果の2つを合わせた寄与を評価するものとなります。

一方,堀さんが紹介された“partila η”は,Bの主効果とA*Bの交互作用
効果のそれぞれの寄与を別々に評価できるようになっています。したがって,
交互作用がないという特別な場合は,要因Bについての Pearson の偏相関比
と“partila η”は同じになりますが,そうでない場合は交互作用の分,違
いが出てくることになります。

ということで,“partila η”には「偏相関比」とは別の名前を付けるのが
必要かもしれません。・・と思いつつ,さらに調べてみると,SASのほうでは,
偏相関比(partial correlation ratio)と呼んでいるようです(ただし,
“semipartial”と“full partial”に分けていて,その後者のほう)。
http://support.sas.com/documentation/cdl/en/statug/63347/HTML/default/viewer.htm#statug_glm_sect032.htm

以上,結論はありませんが,偏相関比と呼ぼうと提案した手前,責任を
感じて調べたところをご報告しておきます。

追加の情報がありましたら,ぜひお願いします。


===== 以下,堀さんとのやりとり =====
: Date: Wed, 09 Aug 2006 19:53:10 +0900
: From: Tomokazu HAEBARA <haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp>
: Subject: [fpr 2999] Re: SPSSの偏イータ2乗
: To: fpr (at) psy.chubu.ac.jp (fpr ML)
: 
: fprの皆様
: 
: 南風原@東大教育心理です。
: 
: Keizo Hori さんからの引用:
: 
: > APAなどで、効果量を記載するように求められていますが、偏イータ2乗をイータ
: > 2乗として報告している論文が結構あるらしいです。その原因にSPSSがあるらし
: > い。
: > 
: > Pierce, C. A., Block, R. A., & Aguinis, H. (2004). Cautionary note on 
: > reporting eta-squared values from multifactor ANOVA designs. Educational 
: > and Psychological Measurement, 64, 916-924.
:  http://www.montana.edu/wwwpy/Block/papers/Pierce,Block,&Aguinas-2004.pdf
: > にそのことが指摘されてます。
: 
: 
: 確かに,報告された値から要因全体での説明率を求めると100%を越える
: ものがゴロゴロありますね。甚だしい誤りが多いことに驚きました。
: 
: これは推測ですが,こうした誤りに著者も査読者も気づかないというのは,
: 「効果量を掲載せよと言われるから計算しているけど,実際には,その値
: にほとんど注意を払っておらず,結局はアスタリスクだけを見ている」と
: いうことが原因かも知れません。特に実験研究では,効果量というものの
: 必要性が,実感として感じられていないのではないかと思います。
: 
: あと,言葉の問題ですが,「偏イータ」は日本語として美しくないですね。
: 「偏相関比」で良いのではないでしょうか。
: 
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: 南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp

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南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp


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