石井@名大教育です. 自分も過去に書いたもので思いっきり使用してしまってい るので書きづらいのですが,「標本の大きさ」を意味するも のとして「標本数」という語を用いている例をよく目にしま す. 「標本数」でも文脈から十分「標本の大きさ」を意味して いると読み取れますが,母集団から取り出した一部分が標本 だとすると,「標本数」は,そういう一部分が何個あるか (標本抽出を何回行ったか)を表す値であるように思います. 統計学辞典(1989)東洋経済新報社 のp35rに「(母)集団 の中から一部を選び出し,選ばれた個体についてのみ調査を 行い,その結果から母集団についての推論を行わざるを得な い.直接調査の対象となる個体を母集団からの標本という」 (中略)「n個の個体を標本として選ぶ」というように,母 集団から抽出したsample(上パラグラフで言うところの標本) に含まれる個体を「標本」と呼ぶような文献も見つけました が,すぐ下のところで「大きさ n の無作為標本」と言って おり,やはり「標本数 n の」とは言ってないです. 他の分野のことはともかくとして,統計分析や統計学にお いては,「標本数」を「標本の大きさ」の意味で用いるのは 正確性に欠けるのではないかなと思いました. 講義でこの話をしたら,「『被験者数』もダメですか?」 という質問が出ました.意味的には良しとして,被験者と いう言い方は最近敬遠されるから,研究参加者数などとな るのかなと,学生には答えました. -- 石井秀宗(Hidetoki Ishii) 名古屋大学 大学院教育発達科学研究科
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