鈴木です 実は,私自身は標本サイズ(=標本の大きさ=サンプルサイズ)の意味で, 標本数(=サンプル数)を使うことは,間違いである,と考えておりまして, 講義では必ず強調し,試験問題にも出します。 日本中の出版物にある標本数は,改訂や増刷のたびに,すべて標本サイズに 置換されて欲しいと念願したこともありました。 新しい本が書かれるときは標本サイズと用語されるべきだと思いますし, レフリーだったら必ず指摘します。 しかし今は,いい話題として扱っています。教育的にとてもいい話題です。 確率分布を実感的にわかる時,不可避的に標本サイズと標本数が異なると 理解される。シミュレーションをやれば,これもまた絶対に理解され区別される。 信頼区間の頻度論的な実感をもつ時にも標本サイズと標本数は必ず異なる概念と して理解される契機と一致している。 そう理解されないと,「2標本t検定」という統計用語が,n=2の標本を 検定するように聞こえてしまう。 > 石井@名大です. > >鈴木さん,岡田さん,吉村さん,レスポンスをありがとうございます. > > 言い慣わしは変えにくいですし,必要なければ変える必要もない >と思います.私自身使っていた手前,少しホッとしています. > > 吉村さんが書いていましたが,私は統計学の授業で,ユニットを >「個体」,抽出されたユニットの集合を「標本」として学生に教え >ています.そうなると授業で標本数という言葉は使いづらくなりま >した.「サンプルサイズ」なら誤解はないですね. > > 鈴木さんの, >> 標準誤差と標準偏差と標本誤差の区別ができないと笑われますが >> 標本数と使っても笑われない,という相違があるように思います。 > >には説得力がありました.標本抽出の繰り返し数の意味で「標本数」 >を使用することがなかったため,誤解なくサンプルサイズの意味で >用いられ,それが定着しているのが現状,と理解しました. > > シミュレーション研究で,ある条件下でサンプルサイズnの無作為 >標本を発生させパラメタ推定を行うという手続きを,例えば,千回 >行って,推定値の標本分布からその推定法の善し悪しを検討する, >ということがなされます.このときの千回は,標本抽出の繰り返し >数の意味での「標本数」です. > > また,メタ分析において,いくつもの研究結果における効果量を >統合するとき,the number of studies, the number of effect sizes, >the number of samples は同じ意味で使われます.このときの >the number of samples も標本抽出の繰り返し数の意味での「標本 >数」と考えられます. > > こうしたことを意識することが多くなり,標本数と標本の大きさ >の区別ができなければ笑われるようにでもなってきたら,両者は整 >理されていくかなと思いました. > >
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