[fpr 3517] 共分散構造モデルと構造方程式モデル

南風原朝和

fprの皆様

「共分散構造分析」か「構造方程式モデリング」か,という興味深い
議論に関連して,分析法のネーミングについて,時々,授業などで
話していることを書いてみたいと思います。

分析法のネーミングは,大きく,
 1.分析の目的・狙いを前面に出したもの
 2.分析法の数学的・統計学的な原理に注目したもの
に分類できるように思います。

分類が難しいものもありますが,たとえば1の例としては,
 ・平均値差の検定
 ・正規性の検定
 ・判別分析
 ・クラスター分析
 ・因子分析
 ・パス解析
 ・因果分析
などが挙げられます。これらは,何を目的としたものかを容易に説明・
理解することができます。

一方,2の例としては,
 ・分散分析
 ・共分散構造分析
が代表的です。

これらは,名前を見ただけでは(分散や共分散というものを知って
いても)何のための方法か分かりませんし,「共分散構造」とは何か
を説明・理解するのはなかなか大変です。

しかし,2のタイプの利点は,まさにそこにあるように思います。
「共分散構造」が何かを理解できれば,「共分散構造分析」がモデル
から導かれる共分散とデータから得られる共分散の適合という原理
に基づく方法であることが理解でき,そこから,たとえば「モデルの適合
イコール因果関係の確証」ではないという理解にもつながってきます。

1のタイプの名称では誤解を生じかねないところを,2のタイプの名称
が防いでいる,そういう役割をもっているように思います。

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南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp


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