[fpr 3549] 効果量としての「偏決定係数」

南風原朝和

fprの皆様

ひとつ前の記事で,石井さんが
「ΔR^2=ある説明変数を抜いたときの決定係数の差分」
と書いておられたので思い出したのですが,だいぶ前(2006年)に
堀さんと,partial η2 についてやりとりをしたことがありました。
http://mat.isc.chubu.ac.jp/fpr/fpr2006/0096.html

そこでは,「偏イータ」は日本語として美しくないので,「偏相関比」
が良いのでは,と書きましたが,partila η2 だと「偏相関比の2乗」
と言わなくてはならず,長くなるのが欠点です。
(「偏相関比」という言葉は,岩原信九郎『新訂版 教育と心理の
ための推計学』の401頁にもあります。)

partial η2 という指標は,
「ある変数をモデルに追加することによって,追加前の残差分散が何%減少したか」
を表すものであり,また
「追加前の変数の影響を除いたときの,追加変数と従属変数との偏相関の2乗」
だと理解しています。

これは分散分析の文脈だとpartila η2 と呼ばれていますが,上記のことは
重回帰分析でもまったく同様なので,それに合わせると,重回帰分析では
partial R2 となります。そして,partial η2を「偏イータ2乗」と呼ぶなら
partial R2 は「偏アール2乗」と呼ぶことになりますが,統計的には同じ2つ
のものに(日本語として美しくない)名称をそれぞれに付けるよりは,
「偏決定係数」で統一するのが良いのではないかと思ったところです。
相関の2乗が決定係数で,偏相関の2乗が偏決定係数,ということで自然かと思います。

実際,検索してみると,「偏決定係数」という日本語も
“coefficient of partial determination”という英語も,すでに使われています。
(「偏アール2乗」は,まだないようです…。今後もないほうがいいです。
 “partial R2”は使われています。短くて便利なので,これからも使われるでしょう。)

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南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp


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