岡本@日本女子大学心理学科です。 統計の方とメールのやり取りをしていて、以下のことを 書きたくなりました。 統計学、あるいは一部の実質科学の文献を読んでいると 科学とは近似である、研究はゲームである というようなことが書かれているのに遭遇することがあります。 これは、実質科学の現場とは合わない考え方であると思います。 少なくとも、近似とかゲームとかという考え方とは馴染まない 人たちもいると思います。 例えば、最近ではヨーロッパにある素粒子の実験施設で 出された分析結果についてマスコミも騒がしくなりました。 もし、物理学が近似を目的とするものであれば、観測結果の 確率が99.???%以上でないとだめという発想は出てこないと 思います。真理を求めるからこそ、これこれが真理だと この結果の確率はこうなるという発想になると思います。 近似なら、単に近似の精度を情報として付けておけば済むことです。 科学が近似であるとするならば、物理学は、十分に実用上の 近似は達成できていると思います。しかし、真理を探求したいと いう気持ちがあるからこそ、素粒子の研究がすすめられ、宇宙についての 理論が探求されるのだと思います。 科学が真理を探求するものであれば、真理を表現するものが理論と いうことになります。データは真理を探求するための手段、そして データから情報を引き出す技術・道具としての統計学という 位置づけになります。 もちろん、統計学者にとっては統計学は目的ですし、 心理学を利用する人たちにとっては、心理学的真理よりは ある意味で現実を(近似的)に反映する情報が有益だと いうことになります。心理学のなかに、心理学を目的とする、 心理学的真理を探究する研究者と、それが利用できればよい とする実践家が混在すると、ある意味で混乱のもとになると 思います。心理学を科学的心理学的真理を探究するものとして 位置付けるか、心理学を1つの情報源として利用するのか、 人により立場は異なりますが、しかし、この区別は意識される べきであると思います。 横浜市在住 岡本 安晴
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