fprの皆様 ここ数年,大学院で,心理統計を専門としない大学院生を主たる対 象に心理統計学の概論の講義をしています。そして,毎回,疑問点 をメールで出してもらって,次回,そのリストを配付して議論して います。 今週分の質問に「部分相関係数と偏回帰係数の値が大きく異なるの はどのようなときですか」というのがありました。 以前に「効果量としての「偏決定係数」」という題で,このMLに 書いたことがありますが,偏相関係数の2乗(偏決定係数)は, 「ある変数をモデルに追加することによって,追加前の残差分散が 何%減少したか」 を表すものです。 表現を変えれば, 偏決定係数=「新たに説明できた分散」÷「未説明で残っていた分散」 です。 一方,部分相関係数の2乗(部分決定係数)は, 部分決定係数=「新たに説明できた分散」÷「もともとの分散」 です。 2つの式の分子は同じなので,両係数の値が大きく異なるのは,そ の分母が大きく異なるときということになります。ということは, 当該の説明変数を追加する際に「未説明で残っていた分散」が, 「もともとの分散」よりだいぶ小さいとき,ということで,結局の ところ,「モデル内の,当該の変数以外の変数による分散説明率が 大きいとき」ということになります。 説明変数が2つしかないときであれば,もう一方の変数が,単独で yを説明する力が強いときは,その分,「未説明で残っていた分散」 が小さく,偏相関は大きくなり,部分相関との差が広がる,という ことです。 部分相関係数と偏回帰係数の式からも,このような解釈を引き出す ことは可能ですが,yの分散の説明という統一的な観点から,上記 のように説明するほうが,効果量の理解も深められてベターかも, と思いました。 ---- 南風原朝和 haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp
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