[fpr 3613] 部分相関と偏相関の値が大きく異なるとき

南風原朝和

fprの皆様

ここ数年,大学院で,心理統計を専門としない大学院生を主たる対
象に心理統計学の概論の講義をしています。そして,毎回,疑問点
をメールで出してもらって,次回,そのリストを配付して議論して
います。

今週分の質問に「部分相関係数と偏回帰係数の値が大きく異なるの
はどのようなときですか」というのがありました。

以前に「効果量としての「偏決定係数」」という題で,このMLに
書いたことがありますが,偏相関係数の2乗(偏決定係数)は,
「ある変数をモデルに追加することによって,追加前の残差分散が
 何%減少したか」
を表すものです。

表現を変えれば,
 偏決定係数=「新たに説明できた分散」÷「未説明で残っていた分散」
です。

一方,部分相関係数の2乗(部分決定係数)は,
 部分決定係数=「新たに説明できた分散」÷「もともとの分散」
です。

2つの式の分子は同じなので,両係数の値が大きく異なるのは,そ
の分母が大きく異なるときということになります。ということは,
当該の説明変数を追加する際に「未説明で残っていた分散」が,
「もともとの分散」よりだいぶ小さいとき,ということで,結局の
ところ,「モデル内の,当該の変数以外の変数による分散説明率が
大きいとき」ということになります。

説明変数が2つしかないときであれば,もう一方の変数が,単独で
yを説明する力が強いときは,その分,「未説明で残っていた分散」
が小さく,偏相関は大きくなり,部分相関との差が広がる,という
ことです。

部分相関係数と偏回帰係数の式からも,このような解釈を引き出す
ことは可能ですが,yの分散の説明という統一的な観点から,上記
のように説明するほうが,効果量の理解も深められてベターかも,
と思いました。

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南風原朝和 haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp


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