守@農工大です。 ということは、Cummingの主張の通り、 「p値を示す従来のやり方を止めて、信頼区間を示すことにしたほうが良い」わけですね。 今回のSARMACはプログラムコミッティーの意向から統計関係の全体会がもう一つ最後にあり、 地元オランダのTilburg UniversityからJelte Wichertsという人が Fraud and Human Factors in (Psychological) Science というタイトルで講演をしました。 データの改ざんとまでは言えないまでも、そうしたことを推測させるデータが一流のジャーナル掲載論文でも得られていることを話し、 実験結果(と分析結果)を後から報告する現在のスタイルを改めて、 あらかじめ研究仮説と実験計画を投稿し、それを審査してジャーナルへの採否を決め、 採択になった研究は実験結果がどんなものになろうとそれをそのまま報告するという Registered experimentsというスタイルを提案しています。 APSのPerspectives on Psychological Scienceでもこうしたスタイルの論文掲載を始めるようです。 いずれにせよ、帰無仮説棄却有意検定型の統計は役割を終えつつあるということですね。 On 2013/07/09, at 15:58, Yasuharu Okamoto <okamotoy (at) fc.jwu.ac.jp> wrote: > > 岡本@日女大です。 > > 前提となる確率モデルが正しいとき > 「棒に刺さった輪投げの輪」のように「棒」を外れるのは5%(95%信頼区間の場合) > が導かれるということなので、これは確率モデル(帰無仮説と比べると母数がパラメータ > のままですが)に依存した結論です。p値の場合(こちらは、母数を固定した帰無仮説に > 基づく結論ですが)と確率モデルに依存しているという点では共通しています。 > p値と信頼区間の違いの1つとして、分析結果を表示している単位が異なることが > あげられます。p値は確率ですが、実質科学的には確率という尺度で表されるよりも > 母数と同じ尺度で表示される信頼区間の方がわかりやすいと思います。 > > 横浜市在住 > 岡本安晴 > > -----Original Message----- > From: Kazuo Mori [mailto:kaz-mori (at) cc.tuat.ac.jp] > Sent: Tuesday, July 09, 2013 3:30 PM > To: fpr ML > Cc: Kazuo Mori > Subject: [fpr 3617] Re: 有意検定よりも信頼区間 > > 守@農工大です。 > > ふーむ、専門家の方にとっては自明のことだったんですね。 > 恥を承知で申し上げると、私はあまり深く考えることもなく、 > 「p<.05で有意となるような実験」を20回繰り返したら、 > そのほとんどで同じように有意となるものだと思っていました。 > ところがそうでないことを改めて知り、ビックリした次第です。 > >> 信頼区間も統計量の1種なので、ランダムに踊りまくります。 > 信頼区間の方は「ランダムに踊りまくる」とはいえ > 「棒に刺さった輪投げの輪」のように「棒」を外れるのは5%(95%信頼区間の場合)という理解でいいんですよね。 > > > On 2013/07/09, at 14:57, Yasuharu Okamoto <okamotoy (at) fc.jwu.ac.jp> wrote: > >> >> 岡本@日本女子大学です。 >> >> 確率的事象はランダムに踊りまくるのが普通です。 >> 信頼区間も統計量の1種なので、ランダムに踊りまくります。 >> 信頼区間が踊りまくっている例は、 >> 稲垣宣生(2003、第9版)「数理統計学、改訂版」裳崋房 >> の図9.1、9.2(pp. 156-157)に示されています。 >> >> 横浜市在住 >> 岡本安晴 >> >> -----Original Message----- >> From: Kazuo Mori [mailto:kaz-mori (at) cc.tuat.ac.jp] >> Sent: Tuesday, July 09, 2013 2:23 PM >> To: fpr ML >> Cc: Kazuo Mori >> Subject: [fpr 3615] 有意検定よりも信頼区間 >> >> 守@農工大です。 >> >> 南風原さんの投稿を見て、つい先日SARMACで聞いた講演のことを思い出しました。 >> (同じ統計繋がりというだけで部分相関と関連しているわけではありません。) >> >> 講演者はオーストラリア・メルボルンのLa Trobe UniversityのGeoff Cummingという人で、 >> 講演の主旨は「有意検定よりも信頼区間」ということでした。 >> 自身の近著 >> Cumming, G. (2012). Understanding The New Statistics: Effect Sizes, Confidence Intervals, and Meta-Analysis. New York: Routledge. >> に基づいて、さらにこの本の章ごとにExcelで遊べるデモ(ESCI)が用意されていて、本人のサイト(www.thenewstatistics.com)からタダでダウン >> ロードできます。 >> 講演では第5章の"Dance p"が中心で、以下にp値が当てにならないか(ほとんどランダムに踊りまくる)を繰り返しデモで示してくれました。 >> 「p値には再現性がなく、信頼性が低い。ある実験でp<.05になったとしても、同じ条件で実験を繰り返した時にほぼ同じp値が得られる確率は極 > め >> て低い」という話でした。 >> じゃ、従来の仮説検定の代わりに何を指標にしたらいいのか?というと、信頼区間を示せばいいということでした。APAもこの方向で統計分析の > 記 >> 述を改める方向のようです。 >> >> 質問をする勇気もなく、というかそもそも何を質問したらいいかもわからないまま、あっけに取られていただけでしたが、 >> どなたか、こうした「新しい統計学」について初学者にもわかる補足説明をしていただけたらありがたく存じます。 >> >> --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- >> SARMAC事務局(http://www.sarmac.org/) >> 守 一雄@184-8588東京農工大学工学部(これだけで郵便が届きます。) >> 電話 042-388-7606(ダイヤルイン) >> 『DOHC』『KRproject』主催者 >> http://www.avis.ne.jp/~uriuri/kaz/ >> 最近の論文5件: >> http://dx.doi.org/10.7227/RIE.87.1.5 <---先頭集団効果 >> http://dx.doi.org/10.2466/22.24.PMS.114.1.137-140 <---左利きの世界 >> http://dx.doi.org/10.4236/psych.2012.31005 <---子どもの目撃記憶 >> http://dx.doi.org/10.4236/psych.2011.27100 <---子どものAsch実験 >> http://dx.doi.org/10.1080/00207591003774485 <---サクラなしAsch実験 >> --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- >> >> >> >> >> >> >> >> >> >> >> >> >> >> On 2013/07/09, at 12:52, "Kawano, Takuji" <kawano (at) tokushima-u.ac.jp> wrote: >> >>> 南風原 先生、(fprの皆様) >>> >>> いつも、統計に関する疑問点に対して簡潔で、分かりやすい説明をしてくださり >>> ありがとうございます。 >>> 重回帰モデルで変数間の関係を理解しようとするとき、説明変数全体と目的変数の >>> 間の関係は、重相関係数で表すことができるが、 >>> 個々の説明変数と目的変数の間の関係を表現する方法がたくさんあるので、その >>> 特徴をきちんと整理して理解しておく必要があると思います。 >>> >>> 単回帰モデルでの変数間の関係は、相関係数、回帰係数、標準回帰係数の >>> 3種類の表現方法があるが、重回帰モデルでの理解を行う際には、相関係数に >>> 部分相関係数と偏相関係数の2種類が加わり、回帰係数は、偏回帰係数と変わり、 >>> その標準偏回帰係数も存在するということになる。 >>> 単回帰モデルの場合は、相関係数と標準回帰係数の値は等しく、その有意確率の >>> 値も等しくなるが、 >>> 重回帰モデルの場合、相関係数、部分相関係数、偏相関係数、標準偏回帰係数の >>> 値は、通常等しくならない。 >>> しかし、今回、南風原先生が説明してくださった、部分相関と偏相関の値が大き >>> く異なる >>> 理由を正しく理解できたとして、その2つ(部分相関と偏相関)の値が大きく異 >>> なって >>> いても、それらの有意性検定の際に算出される有意確率の値は、等しいということを >>> 理解しておくことが必要だと思います。つまり、関係の大きさ(強さ)を表す方 >>> 法は、 >>> たくさんあり、異なった数値になるが、それらの関係の有意性を判断する際に使 >>> われる >>> 有意確率の値は、相関係数に対する有意確率の値の場合を除いて、他のすべての >>> 方法で同じであると。 >>> >>> 授業で、階層的重回帰分析について説明するとき、はじめに上の事柄を正しく理解 >>> させることで苦労しています。今後も、この fpr で、統計に関するさまざ >>> まなことに >>> ついて分かりやすい解説、説明をお願いいたします。 >>> >>> >>> 川野卓二 徳島大学 教育改革推進センター kawano (at) tokushima-u.ac.jp >>> >>> >>> >>> >>> >>> >>> (2013/07/08 16:11), 南風原朝和 wrote: >>>> fprの皆様 >>>> >>>> ここ数年,大学院で,心理統計を専門としない大学院生を主たる対 >>>> 象に心理統計学の概論の講義をしています。そして,毎回,疑問点 >>>> をメールで出してもらって,次回,そのリストを配付して議論して >>>> います。 >>>> >>>> 今週分の質問に「部分相関係数と偏回帰係数の値が大きく異なるの >>>> はどのようなときですか」というのがありました。 >>>> >>>> 以前に「効果量としての「偏決定係数」」という題で,このMLに >>>> 書いたことがありますが,偏相関係数の2乗(偏決定係数)は, >>>> 「ある変数をモデルに追加することによって,追加前の残差分散が >>>> 何%減少したか」 >>>> を表すものです。 >>>> >>>> 表現を変えれば, >>>> 偏決定係数=「新たに説明できた分散」÷「未説明で残っていた分散」 >>>> です。 >>>> >>>> 一方,部分相関係数の2乗(部分決定係数)は, >>>> 部分決定係数=「新たに説明できた分散」÷「もともとの分散」 >>>> です。 >>>> >>>> 2つの式の分子は同じなので,両係数の値が大きく異なるのは,そ >>>> の分母が大きく異なるときということになります。ということは, >>>> 当該の説明変数を追加する際に「未説明で残っていた分散」が, >>>> 「もともとの分散」よりだいぶ小さいとき,ということで,結局の >>>> ところ,「モデル内の,当該の変数以外の変数による分散説明率が >>>> 大きいとき」ということになります。 >>>> >>>> 説明変数が2つしかないときであれば,もう一方の変数が,単独で >>>> yを説明する力が強いときは,その分,「未説明で残っていた分散」 >>>> が小さく,偏相関は大きくなり,部分相関との差が広がる,という >>>> ことです。 >>>> >>>> 部分相関係数と偏回帰係数の式からも,このような解釈を引き出す >>>> ことは可能ですが,yの分散の説明という統一的な観点から,上記 >>>> のように説明するほうが,効果量の理解も深められてベターかも, >>>> と思いました。 >>>> >>>> ---- >>>> 南風原朝和 haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp >>>> >>>> >>>> >>>> >>> >>> >> >> >> > > >
ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。