三好さん,fprの皆様 以下,2因子モデルを想定し,式とベクトル図の両方から ご説明します。 (1) 式から 観測変数および各共通因子の分散を1とすると,因子負荷は 因子にかかる標準偏回帰係数となります。一方,準拠構造は, 当該の因子から他の因子と相関する成分を除いたものと 観測変数との部分相関係数です。 p.235で部分相関係数と標準偏回帰係数の式を比べると, 部分相関係数 = 標準偏回帰係数 × √1 - (r_12)^2 となっています。いまの因子分析の文脈では,r_12 は因子1 と因子2の相関となり,ルートの中は 1 - 因子間相関^2 = 1 - cos(因子ベクトル間の角度)^2 = sin(因子ベクトル間の角度)^2 となります。したがって,因子分析の文脈では 準拠構造 = 因子負荷 × sin(因子ベクトル間の角度) となるという次第です。 (2) ベクトル図から (a) p.324の図10-2は,観測変数および各共通因子のベクトルの 長さを1とする尺度で描いています(p.325)。たとえばベクト ル f_1 の長さも1で,すると因子負荷 b_j1 は物差しで測ると だいたい 0.43 くらいになります。それに対し,準拠構造 c_j1 は 0.23 くらいで,因子負荷と同じにはならず,それより小さく なります。 (b) p.248の図8-9の x_2 にかかる偏回帰係数 b_2 は,ベクト ル b_2 x_2 の長さが,ベクトル x_2 の長さの 0.33 倍くらい ですので,約 0.33 です。また,残差 x_2 | x_1 にかかる単回 帰係数も,同様にベクトルの長さの比から,約 0.33 で b_2 と 同じなります。図中の「同じ値になる」というのは,このよう に対応するベクトルの長さの比が同じになるということです。 上記(a)では,因子負荷や準拠構造が原点からの距離(長さ) そのもので表現されているのに対し,(b) の偏回帰係数や単回帰 係数は,ベクトルの長さの比で表されるところに,2つの図の違い があります。 Hiroto Miyoshi さんからの引用: > Date: Tue, 23 Jul 2013 10:17:54 +0900 > From: Hiroto Miyoshi <hiroto_miyoshi (at) nexyzbb.ne.jp> > Subject: [fpr 3620] 準拠構造と因子負荷との関係 > To: fpr (at) psy.chubu.ac.jp (fpr ML) > > すみません。教えてください。 > > 心理統計学の基礎(南風原)のp332式(10.14)に > 準拠構造は、因子負荷に因子間の角度のサインを > 掛けたものとありますが、なぜ因子間の角度のサインを > 掛ける必要があるのでしょうか。 > 同じページのもう少し下の方に、「準拠構造は、部分相関係数 > だから」という記述があり、また、p324の図10−2とp248の > 図8−9を見比べても、準拠構造と因子負荷の値は > 一致してもよいのではと直感的には思うのですが。 > 私が何を見落としているのかが考えても分かりません。 > よろしくお願いします。 > > 三好 > -- > -------------------------------------- > Hiroto Miyoshi > 三好弘人 こらーる岡山診療所(心理担当スタッフ) > hiroto_miyoshi (at) nexyzbb.ne.jp ---- 南風原朝和 haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp
ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。