[fpr 3621] 準拠構造と因子負荷との関係

南風原朝和

三好さん,fprの皆様

以下,2因子モデルを想定し,式とベクトル図の両方から
ご説明します。

(1) 式から

観測変数および各共通因子の分散を1とすると,因子負荷は
因子にかかる標準偏回帰係数となります。一方,準拠構造は,
当該の因子から他の因子と相関する成分を除いたものと
観測変数との部分相関係数です。

p.235で部分相関係数と標準偏回帰係数の式を比べると,

 部分相関係数 = 標準偏回帰係数 × √1 - (r_12)^2

となっています。いまの因子分析の文脈では,r_12 は因子1
と因子2の相関となり,ルートの中は

 1 - 因子間相関^2 = 1 - cos(因子ベクトル間の角度)^2
                   = sin(因子ベクトル間の角度)^2

となります。したがって,因子分析の文脈では

 準拠構造 = 因子負荷 × sin(因子ベクトル間の角度)

となるという次第です。

(2) ベクトル図から

(a) p.324の図10-2は,観測変数および各共通因子のベクトルの
長さを1とする尺度で描いています(p.325)。たとえばベクト
ル f_1 の長さも1で,すると因子負荷 b_j1 は物差しで測ると
だいたい 0.43 くらいになります。それに対し,準拠構造 c_j1 
は 0.23 くらいで,因子負荷と同じにはならず,それより小さく
なります。

(b) p.248の図8-9の x_2 にかかる偏回帰係数 b_2 は,ベクト
ル b_2 x_2 の長さが,ベクトル x_2 の長さの 0.33 倍くらい
ですので,約 0.33 です。また,残差 x_2 | x_1 にかかる単回
帰係数も,同様にベクトルの長さの比から,約 0.33 で b_2 と
同じなります。図中の「同じ値になる」というのは,このよう
に対応するベクトルの長さの比が同じになるということです。

上記(a)では,因子負荷や準拠構造が原点からの距離(長さ)
そのもので表現されているのに対し,(b) の偏回帰係数や単回帰
係数は,ベクトルの長さの比で表されるところに,2つの図の違い
があります。



Hiroto Miyoshi さんからの引用:

> Date: Tue, 23 Jul 2013 10:17:54 +0900
> From: Hiroto Miyoshi <hiroto_miyoshi (at) nexyzbb.ne.jp>
> Subject: [fpr 3620] 準拠構造と因子負荷との関係
> To: fpr (at) psy.chubu.ac.jp (fpr ML)
> 
> すみません。教えてください。
> 
> 心理統計学の基礎(南風原)のp332式(10.14)に
> 準拠構造は、因子負荷に因子間の角度のサインを
> 掛けたものとありますが、なぜ因子間の角度のサインを
> 掛ける必要があるのでしょうか。
> 同じページのもう少し下の方に、「準拠構造は、部分相関係数
> だから」という記述があり、また、p324の図10−2とp248の
> 図8−9を見比べても、準拠構造と因子負荷の値は
> 一致してもよいのではと直感的には思うのですが。
> 私が何を見落としているのかが考えても分かりません。
> よろしくお願いします。
> 
> 三好
> -- 
> --------------------------------------
> Hiroto Miyoshi
> 三好弘人 こらーる岡山診療所(心理担当スタッフ)
> hiroto_miyoshi (at) nexyzbb.ne.jp

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南風原朝和 haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp


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