[fpr 3645] 「確率の出現」

広田すみれ

fprの皆様

広田すみれ@東京都市大学です。初めまして。
長年貢献もせず、ただ勉強させていただいておりましたが、
本日は恥ずかしながら翻訳した本の宣伝のため、初めて書き込みをさせていた
だきます。

12月21日に森元良太氏(科学哲学・慶大非常勤講師)と共同で翻訳した
イアン・ハッキング『確率の出現』を慶大出版会から上梓することになりまし
た(定価3990円)。
http://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766421033/

原書は初版1975年、第2版が2006年で世界的に著名な科学哲学者ハッキング
の出世作です。ハッキングは確率の主観/客観の二元性は出現の当初から存在
していることを明らかにし、パスカルはじめライプニッツ、ヤコブ・ベルヌー
イなどの仕事を辿って、17世紀の確率出現の10年間について確率という考え
の出現の経緯を詳しく検討し、最後はヒュームの帰納論理を扱っています。

私はリスクとの関わりに関心があって翻訳を始めたのですが、それ以外の話題
として、ヤコブ・ベルヌーイの極限定理について論じた1章(「精神的確実性」
としてのp値が出てきます)や、パスカルの賭けやポールロワイヤル『論理学』
に見られる意思決定の原型についての記述も興味深いと思います。何より、確
率の出現は物理学のような高級科学ではなく、むしろ低級科学と呼ばれた医学
や化学と深く関わっている(ライプニッツの部分では法での証拠と判断との関
係も論じられます)などの「科学哲学としての確率論史」は、読み物としても
実に興味深いです(冒頭は「推理小説のよう」と言われているそうです)。
読むと「確率」のイメージが変わります。

馬鹿げたことに、能力以上の本の翻訳に手を出してしまった結果、企画から上梓
まで約8年もかかってしまいました(森元氏の協力でなんとか完成しました)が
、代わりに多少は読みやすくなったのでは、と自負しています。
編集者の配慮で物理的に軽い本になっており、持ち歩きもしやすいと思います。
表紙の羊はデザイナーのイメージ(「フーコー」と「確率」からの連想)なので、
あまり含意を見いださないでいただけると嬉しいですが、なにやらクリスマス風
のこの表紙を書店で見かけたらぜひお手に取ってみてください。
お正月休みの読書にもいいかもしれません。アマゾンでも、もう予約ができるようです。
http://p.tl/gBzj

広田すみれ




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