[fpr 3773] はじめての統計データ分析

豊田秀樹

fprの皆様

このたび、朝倉書店より以下の書籍を刊行しました。
スクリプトを配り始めましたので、スクリプトだけでも
是非ダウンロードしてご覧ください。

書名:はじめての統計データ分析
副題: —ベイズ的〈ポストp値時代〉の統計学—
A5/212ページ
定価2,808円(本体2,600円+税)
http://www.asakura.co.jp/books/isbn/978-4-254-12214-5/?platform=hootsuite

     あ と が き

 いつか学問の進歩が止まる日は来るのだろうか?
 定理が発見され、理論が積み上げられ、知識は際
限なく増える。それに比べて人間の寿命は延びず、
膨大な知識を学んでいるうちに寿命がつきて、学問
の進歩が止まる日は来るのだろうか?
 そんな日は来ないから、心配はいらない。学問の
進歩を木の成長にたとえるならば、平行に成長した
幾つかの枝は 1本を残して冷酷に枯れ落ちる運命に
ある。枯れ果て地面に落ちた定理・理論・知識は肥
やしとなり、時代的使命を終える。選ばれた 1本の
枝が幹になり、その学問は再構築される。教授法が
研究され、若い世代は労せず易々と古い世代を超え
ていく。そうでなくてはいけない。
 統計学におけるベイズ的アプローチは、当初、高
度なモデリング領域において急成長した。有意性検
定では、まったく太刀打ちできない領域だったから
だ。議論の余地なくベイズ的アプローチは勢力を拡
大し、今やその地位はゆるぎない太い枝となった。
しかし統計学の初歩の領域では少々事情が異なって
いる。有意性検定による手続き化が完成しており、
いろいろと問題はあるが、ツールとして使えないわ
けではない。なにより、現在、社会で活躍している
人材は、教える側も含めて例外なく有意性検定と頻
度論で統計教育を受けている。この世代のスイッチ
ングコストは無視できないほどに大きい。このまま
では有意性検定と頻度論から入門し、ベイズモデリ
ングを中級から学ぶというねじれた統計教育が標準
となりかねない。それでは若い世代が無駄な学習努
力を強いられることとなる。
 教科教育学とか教授学習法と呼ばれるメタ学問の
使命は、不必要な枝が自然に枯れ落ちるのを待つの
ではなく、枝ぶりを整え、適切な枝打ちをすること
にある。事態は急を要する。ではどうしたらいいの
か。どのみち枝打ちをするのなら、R.A.フィッシャ
ー卿の手による偉大な「研究者のための統計的方法
」にまで戻るべきなのだ。以上が本書の執筆の直接
的動機である。本書はベイズ統計学の入門書ではな
い。「研究者のための統計的方法」で扱っている入
門的範囲をベイズ的アプローチで置き替え、中級か
ら高度なモデリング領域へのつなぎ目のない学習系
列の基礎を提供することが本書の目的である。


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 TOYODA Hideki Ph.D.,  Professor,                    Department of Psychology
 TEL +81-3-5286-3567  School of Humanities and Social  Sciences,
Waseda University
 toyoda _atmark_ waseda.jp   1-24-1 Toyama Shinjyuku-ku, Tokyo 162-8644 Japan
 http://www.waseda.jp/sem-toyoda-lab/
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