[fpr 3777] 心理学について思うこと

Yasuharu Okamoto


 岡本@日本女子大学心理学科です。

ワインバーグ著(赤根訳)「科学の発見」p.16に
「科学の目標は、自然現象を純粋に自然現象として
説明することである」
と書かれています。
心理学の場合、例えば、
「心理学の目標は、こころを純粋に科学的立場から
説明することである」
というような意見には最近お目にかかりません。
常に、「実用性はどうか」というような観点が
出されているように思います。このような、
実用性への偏りが、事実を事実として認識することを
妨げるような傾向を生んでいるとしたら問題です。
例えば、現行の信頼性係数が真値と測定値の関係を
過大評価しており、正しく関係を算出する計算方法が
提案されても評価されないというような傾向があるように
思います。
信頼性係数はできるだけ高い数値を出したい、
実用上は高い信頼性係数を出す計算方法の方が
具合がよい、好ましいというようなバイアスがあれば、
これは、事実を無視して、応用上具合のよい方法を
好むという、科学的立場からは受け入れがたい偏りだと
思います。
この偏りは、信頼区間あるいは確信区間についても言えます。
より短い算出区間を出す計算方法の方がよい
という意見を聞くことがありますが、短かければよいというのは
テストの売り込みの営業活動のときには有力なキャッチコピー
の1つでしょうが、科学としてはより適切な長さは短い方なのか
長い方なのかという問題になります。

横浜市在住
岡本安晴




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