岡本@日本女子大学心理学科です。 ワインバーグ著(赤根訳)「科学の発見」p.16に 「科学の目標は、自然現象を純粋に自然現象として 説明することである」 と書かれています。 心理学の場合、例えば、 「心理学の目標は、こころを純粋に科学的立場から 説明することである」 というような意見には最近お目にかかりません。 常に、「実用性はどうか」というような観点が 出されているように思います。このような、 実用性への偏りが、事実を事実として認識することを 妨げるような傾向を生んでいるとしたら問題です。 例えば、現行の信頼性係数が真値と測定値の関係を 過大評価しており、正しく関係を算出する計算方法が 提案されても評価されないというような傾向があるように 思います。 信頼性係数はできるだけ高い数値を出したい、 実用上は高い信頼性係数を出す計算方法の方が 具合がよい、好ましいというようなバイアスがあれば、 これは、事実を無視して、応用上具合のよい方法を 好むという、科学的立場からは受け入れがたい偏りだと 思います。 この偏りは、信頼区間あるいは確信区間についても言えます。 より短い算出区間を出す計算方法の方がよい という意見を聞くことがありますが、短かければよいというのは テストの売り込みの営業活動のときには有力なキャッチコピー の1つでしょうが、科学としてはより適切な長さは短い方なのか 長い方なのかという問題になります。 横浜市在住 岡本安晴
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