[fpr 3842] 真値と測定値との関係の強さの指標

Yasuharu Okamoto


 岡本@日本女子大学心理学科です。

理論的概念の数値(真値)を推定するために測定が行われます。
心理学的概念の測定法の1つとして心理尺度があります。
心理尺度を適用して得られた値(測定値)と真値との関係を
回帰モデルで表したとき、その関係の強さは決定係数
R**2(Rの2乗)で表されます。心理尺度の信頼性係数として
α係数が報告されることが多いですが、α係数はR**2より
大きい値となる傾向があります。このことの報告を
ウェブサイト
http://y-okamoto-psy1949.la.coocan.jp/booksetc/jwuf2017/
に上げました。御関心のある方はどうぞ。

測定値と真値との関係の強さを表す指標としてR**2が使えるので、
心理尺度の信頼性はR**2で示すべきであると思います。
α係数は信頼性の過大評価になっている危険があります。

カテゴリ尺度の潜在変数の信頼性係数を推定する方法として
カテゴリ化による情報の減少を伴わないときの信頼性係数Rho_omegaを
求めるものがあります。これについてはウェブサイト
http://y-okamoto-psy1949.la.coocan.jp/booksetc/BayesEstReliability/
に上げてあります。カテゴリ化による情報の減少を伴わないときの
信頼性係数Rho_omegaは、その項目自体の特性と考えられ、理論的に可能な
その尺度の最大信頼性係数を与えるものと言えます。カテゴリ数を
増やして連続変数に近づけると得られるものです。これに対して
R**2は、現実のカテゴリ尺度と真値との関係を示すものです。

カテゴリ化によって情報が失われる前の信頼性係数Rho_omegaを求める
プログラムはウェブサイト
http://y-okamoto-psy1949.la.coocan.jp/booksetc/pm2010/omegaMoreThan2/
に公開しています。しかし、Rho_omegaはカテゴリ数が2のときは強い制約下
parallel items(Okamoto, 2013, p. 158,
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bhmk/40/2/40_149/_article
)で算出されるので、カテゴリ数が2の場合のプログラムは公開していません。
しかし、R**2は、カテゴリ数が2の場合も、カテゴリ数が3以上の場合と
同様の強さの仮定の下で算出されるので、ウェブサイト
http://y-okamoto-psy1949.la.coocan.jp/booksetc/jwuf2017/Prgs/
にプログラムを公開しています。ただし、算出法がカテゴリ数が2の場合と
3以上の場合と異なるので、分けて説明しています。

α係数は、測定値と真値の関係の強さを表すR**2より大きい値を
とる傾向が強いので、α係数の値が十分であるからといって
測定値と真値との関係が十分に強いという保証はありません。
α係数は、カテゴリ化による情報の損失を伴わない
項目それ自体の信頼性を表すRho_omegaより小さい値をとるので、
α係数の値が小さいときに、カテゴリ数を増やしてどこまで
信頼性を上げることができるか見当が付きません。
このように考えると、アルファ係数を求めることは
あまり意味がない、それよりR**2を求める方が現実の関係を
反映した値が得られる、さらにカテゴリ数が3以上の
場合はRho_omegaを求めると項目本来の信頼性がわかる
となります。
すなわち、
カテゴリ化による損失 = Rho_omega - R**2
です。

横浜市在住
岡本安晴






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