岡本@日本女子大学心理学科です。 理論的概念の数値(真値)を推定するために測定が行われます。 心理学的概念の測定法の1つとして心理尺度があります。 心理尺度を適用して得られた値(測定値)と真値との関係を 回帰モデルで表したとき、その関係の強さは決定係数 R**2(Rの2乗)で表されます。心理尺度の信頼性係数として α係数が報告されることが多いですが、α係数はR**2より 大きい値となる傾向があります。このことの報告を ウェブサイト http://y-okamoto-psy1949.la.coocan.jp/booksetc/jwuf2017/ に上げました。御関心のある方はどうぞ。 測定値と真値との関係の強さを表す指標としてR**2が使えるので、 心理尺度の信頼性はR**2で示すべきであると思います。 α係数は信頼性の過大評価になっている危険があります。 カテゴリ尺度の潜在変数の信頼性係数を推定する方法として カテゴリ化による情報の減少を伴わないときの信頼性係数Rho_omegaを 求めるものがあります。これについてはウェブサイト http://y-okamoto-psy1949.la.coocan.jp/booksetc/BayesEstReliability/ に上げてあります。カテゴリ化による情報の減少を伴わないときの 信頼性係数Rho_omegaは、その項目自体の特性と考えられ、理論的に可能な その尺度の最大信頼性係数を与えるものと言えます。カテゴリ数を 増やして連続変数に近づけると得られるものです。これに対して R**2は、現実のカテゴリ尺度と真値との関係を示すものです。 カテゴリ化によって情報が失われる前の信頼性係数Rho_omegaを求める プログラムはウェブサイト http://y-okamoto-psy1949.la.coocan.jp/booksetc/pm2010/omegaMoreThan2/ に公開しています。しかし、Rho_omegaはカテゴリ数が2のときは強い制約下 parallel items(Okamoto, 2013, p. 158, https://www.jstage.jst.go.jp/article/bhmk/40/2/40_149/_article )で算出されるので、カテゴリ数が2の場合のプログラムは公開していません。 しかし、R**2は、カテゴリ数が2の場合も、カテゴリ数が3以上の場合と 同様の強さの仮定の下で算出されるので、ウェブサイト http://y-okamoto-psy1949.la.coocan.jp/booksetc/jwuf2017/Prgs/ にプログラムを公開しています。ただし、算出法がカテゴリ数が2の場合と 3以上の場合と異なるので、分けて説明しています。 α係数は、測定値と真値の関係の強さを表すR**2より大きい値を とる傾向が強いので、α係数の値が十分であるからといって 測定値と真値との関係が十分に強いという保証はありません。 α係数は、カテゴリ化による情報の損失を伴わない 項目それ自体の信頼性を表すRho_omegaより小さい値をとるので、 α係数の値が小さいときに、カテゴリ数を増やしてどこまで 信頼性を上げることができるか見当が付きません。 このように考えると、アルファ係数を求めることは あまり意味がない、それよりR**2を求める方が現実の関係を 反映した値が得られる、さらにカテゴリ数が3以上の 場合はRho_omegaを求めると項目本来の信頼性がわかる となります。 すなわち、 カテゴリ化による損失 = Rho_omega - R**2 です。 横浜市在住 岡本安晴
ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。