[fpr 3892] 統計学的信頼性と心理学的信頼性

Yasuharu Okamoto


 岡本安晴@(日本女子大学心理学科定年退職)です。

 統計学的信頼性と心理学的信頼性の区別を考えて、ウェブサイト
http://y-okamoto-psy1949.la.coocan.jp/Python/misc/RelCatItms/
を用意しました。カテゴリ項目尺度の信頼性係数を求めるプログラムを
アップロードしています。

 統計学的信頼性は次のモデル

(S)  測定値 = 真値 + 誤差

に基づいて議論され、真値は測定値の期待値

(ST) 真値 = E[測定値]

で与えられます。E[・]は期待値を表します。

 これに対して、心理学的信頼性は次のモデル

(P)  反応 <− 心理学的概念の強さ

に基づくものです。「心理学的概念の強さ」とは、
測定対象である概念の強さで、この値を知るために
回答者の反応を収集します。

 反応が連続量の場合、心理学的概念の強さの
1次式と誤差の和で反応が表され、次式

(Pcon) 反応 = (概念の強さの1次式)+ 誤差

で与えられるので、モデル(S)と基本的に同じモデルになります。

 しかし、反応がカテゴリである順序カテゴリの場合、モデル(P)は

(Pcat) 反応 <− カテゴリ化 <− 心理学的概念の強さ

となり、モデル(S)とは基本的に異なります。

 アルファ係数αは、カテゴリ項目の場合も、モデル(S)に
基づいていると考えられますが、この信頼性係数αは
モデル(Pcat)の場合の信頼性係数より大きくなる傾向が
あります。ここで、モデル(Pcat)に基づく信頼性係数は
反応と心理学的概念の強さとの関係の強さを回帰モデルの
決定係数で与えられるものです。詳しくは、上記ウェブサイトを
ご覧ください。

 モデル(S)の場合、測定値がカテゴリ値であれば、真値も
カテゴリ値、すなわちどのカテゴリ値が真のカテゴリ値か、
と考えるのが自然であると思われますが、真値が平均値で
与えられると(定義(ST))、この真値はカテゴリ値以外の値に
なります。式(ST)で真値を与えると、測定値が連続量の場合と
同様に扱っていけるので統計学的には便利ですが、
カテゴリ値しかとらない値の真値がカテゴリ値ではない
というのは不自然です。しかし、これは量子論的に
考えると、定義(ST)はモデル(Pcat)と整合します。
 量子論では、状態の確率分布を考えますが、モデル(S)の
場合も、真値の確率分布を考ます。真値がカテゴリk
である確率

(Sp)    P(真値=カテゴリk)

を考えます。式(Sp)の確率は、モデル(Pcat)で算出できます。
モデル(Sp)は、モデル(S)における真値の量子論的解釈であり、
真値を確率分布で与えればよいのです。この現代物理学的モデルを、
古典物理学的に単一の値で表す方法が定義(ST)であると
解釈できます。
 しかし、この量子論的解釈においても、統計学的真値と
心理学的真値との違いには注意する必要があります。
心理学的モデル(Pcat)から見た場合、確率分布として
与えられる統計学的真値(Sp)は、心理学的概念の強さから
決まるカテゴリ値の分布であって、心理学的概念の強さとは
区別されるものです。

横浜市在住
岡本安晴







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