岡本安晴@(日本女子大学定年退職)です。 項目への反応が2値、正答/誤答、のとき、 真値を平均値で与える考え方があります。 正答を1、誤答を0で表し、反応をXで表したとき、 反応の真値を期待値E(X)であると考えるやり方です。 しかし、反応が正答/誤答、すなわち、1か0の カテゴリ値であるとき、真値は1か0かの いずれかであると考えるのが自然だと思います。 このとき、真値を1あるいは0である確率分布で 考えることができます。平均値E(X)ではなく、 確率分布{P(X=1),P(X=0)}を 真値とします。 これは、量子力学での考え方に対応しています。 物理的現象Sが、2つの離散的な状態、+とー、 をとるとき、観測前の状態は、確率分布 {P(S=+),P(S=−)} で与えられ、観測後、Sは+であるか、−であるかが 確定します。 項目反応理論の場合も、テストを実施する前は、 確率分布で与えられるが、実施後、回答Xは確定します。 これをベイズ確率モデルの枠組みで記述すると以下のように なります。 回答者のテストに対する状態Sは、S1かS0の2つであり、 次の確率を設定します。 P(X=1|S1) = 1, P(X=0|S1) = 0 P(X=1|S0) = 0, P(X=0|S0) = 1 また、テストを実施する前の回答者の状態Sの分布を P0(S=S1), P0(S=S0) で表します。この回答者の状態の分布が実施前の真値に 相当します。 このとき、同時確率は次式で与えられます。 P(S, X) = P0(S)P(X|S) テストを実施すると観測値として回答Xが確定して、 回答者の状態Sの事後分布が次のように与えられます。 P(S=S1|X=1) = 1, P(S=S0|X=0) = 0 P(S=S1|X=0) = 0, P(S=S0|X=0) = 1 テスト実施後、回答者の回答状態が確定します。 観測後に状態が確定することは、量子論に対応しています。 また、この議論は、正答を1で表すか、他の数値で表すかに 依存していません。 これに対して、真値を期待値E(X)で与えるのは、真値が 回答にどのような数値を与えるかに依存しています。 真値を回答状態の確率分布で与えるのは量子力学的で、 また、ベイズ的枠組みで考えることができます。 真値を期待値E(X)で与えるのは、古典力学的と言えます。 真値を確率分布で考えることは http://y-okamoto-psy1949.la.coocan.jp/Python/misc/RelCatItms/ http://y-okamoto-psy1949.la.coocan.jp/Python/en1/RelCatItms/ で、少し議論しております。 横浜市在住 岡本安晴
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