[fpr 3897] 項目反応理論と量子力学

Yasuharu Okamoto


 岡本安晴@(日本女子大学定年退職)です。

項目への反応が2値、正答/誤答、のとき、
真値を平均値で与える考え方があります。
正答を1、誤答を0で表し、反応をXで表したとき、
反応の真値を期待値E(X)であると考えるやり方です。
しかし、反応が正答/誤答、すなわち、1か0の
カテゴリ値であるとき、真値は1か0かの
いずれかであると考えるのが自然だと思います。
このとき、真値を1あるいは0である確率分布で
考えることができます。平均値E(X)ではなく、
確率分布{P(X=1),P(X=0)}を
真値とします。
 これは、量子力学での考え方に対応しています。
物理的現象Sが、2つの離散的な状態、+とー、
をとるとき、観測前の状態は、確率分布
{P(S=+),P(S=−)}
で与えられ、観測後、Sは+であるか、−であるかが
確定します。
 項目反応理論の場合も、テストを実施する前は、
確率分布で与えられるが、実施後、回答Xは確定します。
これをベイズ確率モデルの枠組みで記述すると以下のように
なります。


回答者のテストに対する状態Sは、S1かS0の2つであり、
次の確率を設定します。
P(X=1|S1) = 1,  P(X=0|S1) = 0
P(X=1|S0) = 0,  P(X=0|S0) = 1

また、テストを実施する前の回答者の状態Sの分布を
P0(S=S1),  P0(S=S0)
で表します。この回答者の状態の分布が実施前の真値に
相当します。
このとき、同時確率は次式で与えられます。
P(S, X) = P0(S)P(X|S)

テストを実施すると観測値として回答Xが確定して、
回答者の状態Sの事後分布が次のように与えられます。

P(S=S1|X=1) = 1,  P(S=S0|X=0) = 0
P(S=S1|X=0) = 0,  P(S=S0|X=0) = 1

テスト実施後、回答者の回答状態が確定します。
観測後に状態が確定することは、量子論に対応しています。
また、この議論は、正答を1で表すか、他の数値で表すかに
依存していません。
これに対して、真値を期待値E(X)で与えるのは、真値が
回答にどのような数値を与えるかに依存しています。

真値を回答状態の確率分布で与えるのは量子力学的で、
また、ベイズ的枠組みで考えることができます。
真値を期待値E(X)で与えるのは、古典力学的と言えます。

真値を確率分布で考えることは
http://y-okamoto-psy1949.la.coocan.jp/Python/misc/RelCatItms/
http://y-okamoto-psy1949.la.coocan.jp/Python/en1/RelCatItms/
で、少し議論しております。

横浜市在住
岡本安晴






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