[fpr 3911] ふたたびsample sizeについて

豊田秀樹

以前に
[fpr 3663] 「標本数」という用語について
http://mat.isc.chubu.ac.jp/fpr/fpr2014/0016.html

という記事の中で
標本数はsample sizeの日本語訳として1番自然だし、
実用的にも困ったことなど起きない、という投稿をしました。
それに関連して2つのことを書きます。

1つは自分がどうして「標本数」という訳語を
使うようになったかを調べたときに、興味深いことを知ったからです。
私がsample sizeの日本語訳として「標本数」を使用するようになったのは、
学部3年生1983年の統計数理研究所の夏の公開講座を受講して以来です。
この夏の公開講座では、林知己夫先生と赤池弘次先生とそのお弟子さんが
同時担当という超豪華な講座(数量化理論・AIC)だったのですが、お二人とも
sample sizeの日本語訳として「標本数」を使っていらっしゃいました
(ノートをみて気が付きました)。
だから「標本数などという訳語を使う人は、統計学がわかっていない!」
という発言は、両先生より統計学に対する理解が深い
と思える人だけがなさってください。
要するに理解度とは関係ないし弊害もありません。

もう1つは、でも最近「標本数」という訳語を使わなくなったという話です。
ベイズ的アプローチでは、MCMCによる母数のサンプリングが不可欠です。
このため母数を標本と呼ばなくてはならない場面が増えます。
これは変えようがありません。
ここで更にデータも標本と呼ぶと、とてもややこしい原稿になります。
このため最近は「標本数」の代わりに「データ数」と呼ぶことが
多くなってきました。
日本語として自然なので使っています。

そもそもベイズ統計学や尤度原理では、母数が所与の時の
測定の独立こそが本質で、母集団からのサンプルと言わなくては
ならない義理はないようにも思います。



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 TOYODA Hideki Ph.D.,  Professor,                    Department of Psychology
 TEL +81-3-5286-3567  School of Humanities and Social  Sciences,
Waseda University
 toyoda _atmark_ waseda.jp   1-24-1 Toyama Shinjyuku-ku, Tokyo 162-8644 Japan
 http://www.waseda.jp/sem-toyoda-lab/
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