[fpr 3956] ウィルス感染検査の信頼性

Yasuharu Okamoto


 岡本安晴@(日本女子大学定年退職)です。

 ウィルス検査が陰性だった方が、後で陽性になったという
記事が流されていました。検査の信頼性について簡単な計算を
してみました。

 診断検査は、心理学では信号検出理論の枠組みで扱われます。
信号検出理論のモデルは、次の表のようにまとめられます。

        検査結果
    ーーーーーーーーーーーーーーー
      +       −    | 事前確率
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
感染 | P(+|感染)  P(ー|感染) | P(感染)
                   |
非感染| P(+|非感染) P(ー|非感染)|  P(非感染)

 検査結果がーであったとき、
「実際に非感染である」と
どの程度信じてよいのか。これが検査の実用上の信頼性を
表していると考えられます。これを「検査結果がーであるとき、
実際は感染者である確率はどれくらいか?」という方向から
見てみます。

 いま仮に、検査の感度P(+|感染)が0.99であるとします。
また、特異度P(ー|非感染)は1とします。ウイルスに非感染であれば
検査でウイルスは見つからないとしました。このとき、次式(1)が
成り立ちます。
(1)  P(感染|−) = A / (A + 1)
ここで、
          A = 0.01 * P(感染) / P(非感染)
です。

 感染者が1%であるとします。
          P(感染) = 0.01、P(非感染) = 0.99
です。このとき、式(1)より
     P(感染|−) ≒ 0.0001
となります。検査結果がーのときの感染者である確率は
1万人に1人の程度です。0ではありませんが。

 ウィルス性の風邪が流行している場合を想定して、
感染者と非感染者の割合が等しい、すなわち
感染者が50%であるとします。
          P(感染) = 0.5、P(非感染) = 0.5
です。このとき、式(1)より
     P(感染|−) ≒ 0.01
となります。検査結果がーのときの感染者である確率は
100人に1人程度です。

 同じ検査であっても、統計学的状況によって
信頼性は大きく変わります。これに関連したことは
岡本安晴「心理学データ分析と測定」勁草書房
第12.3節「診断検査」
で少し扱いました。

横浜市在住
岡本安晴





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