岡本安晴@(日本女子大学定年退職)です。 ウィルス検査が陰性だった方が、後で陽性になったという 記事が流されていました。検査の信頼性について簡単な計算を してみました。 診断検査は、心理学では信号検出理論の枠組みで扱われます。 信号検出理論のモデルは、次の表のようにまとめられます。 検査結果 ーーーーーーーーーーーーーーー + − | 事前確率 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 感染 | P(+|感染) P(ー|感染) | P(感染) | 非感染| P(+|非感染) P(ー|非感染)| P(非感染) 検査結果がーであったとき、 「実際に非感染である」と どの程度信じてよいのか。これが検査の実用上の信頼性を 表していると考えられます。これを「検査結果がーであるとき、 実際は感染者である確率はどれくらいか?」という方向から 見てみます。 いま仮に、検査の感度P(+|感染)が0.99であるとします。 また、特異度P(ー|非感染)は1とします。ウイルスに非感染であれば 検査でウイルスは見つからないとしました。このとき、次式(1)が 成り立ちます。 (1) P(感染|−) = A / (A + 1) ここで、 A = 0.01 * P(感染) / P(非感染) です。 感染者が1%であるとします。 P(感染) = 0.01、P(非感染) = 0.99 です。このとき、式(1)より P(感染|−) ≒ 0.0001 となります。検査結果がーのときの感染者である確率は 1万人に1人の程度です。0ではありませんが。 ウィルス性の風邪が流行している場合を想定して、 感染者と非感染者の割合が等しい、すなわち 感染者が50%であるとします。 P(感染) = 0.5、P(非感染) = 0.5 です。このとき、式(1)より P(感染|−) ≒ 0.01 となります。検査結果がーのときの感染者である確率は 100人に1人程度です。 同じ検査であっても、統計学的状況によって 信頼性は大きく変わります。これに関連したことは 岡本安晴「心理学データ分析と測定」勁草書房 第12.3節「診断検査」 で少し扱いました。 横浜市在住 岡本安晴
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