fprの皆様
南風原@東大教育心理です。
統計的指標の母数はギリシャ文字で,標本統計量はローマ字で,
というのが一般的ですが,標準偏回帰係数については,標本統計
量をギリシャ文字のβであらわし,さらには「ベータ係数」とよ
ぶケースが少なくありません。
APA の Publication Manual でも,第5版(2001年)では,
Table 3.9 "Statistical Abbreviations and Symbols" に,
 β  standardized multiple regression coefficient
とあり("multiple" も引っかかりますが),文中にも "standardized
beta (β) coefficients"という表記があります(p.160)。
しかし,統計学のテキストや授業で回帰係数の母数を扱うときは,
その母数をβとあらわすしかないため,私は,標準偏回帰係数の
標本統計量は b*(アステリスクは上付き)をずっと使ってきま
した(他にもその記号を使っている本はあります)。
それで私のところの学生たちは,授業では b* で習っても,心理
学の論文を書くときにはβを使う,というように使いわけていた
わけですが,APA の Publication Manual の第6版(2010年)を
みると,Table 4.5 "Statistical Abbreviations and Symbols" 
に,
 b*    Estimated values of standardized regression coefficients
        in regression and multiple regression analyses
  β  population values of regression coefficients
とあり,都合のいい方向に変化していました。
この用法が今後どれぐらい広がっていくのか,変化は起きるのか,
いまのところ不明ですが,少なくとも,これまでより堂々と,
授業で b* を使うことができそうです。
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南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp
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