[fpr 3368] 統計分析の多重性

岡本安晴


 岡本@日本女子大学心理学科です。

[fpr 3366]に
> 各2水準のA×Bのデザインで,言いたいことは,A1だけでもB1
> だけでもほとんど効果はないが,それが組み合わさったA1B1条件
> は効果があるということ。

 分散分析のスタンダードな説明法に対する日ごろの不満を書いてみたく
なりました。
 分散分析とは、分散(平方和)の分析であるというのが古典的な説明であると
思います。しかし、データを収集する分析目的は、独立変数と従属変数の
回帰式(構造方程式)における係数の関係を調べるのが第1目的であり、
それらに関わる分散(標準偏差)は二義的であると思います。分散の方は
検定結果の確かさに関わる情報として用いられています。
 回帰式の係数について調べるのであれば、そのようにモデル設定をし
(分散分析の構造モデルはそのようになっていますが)、データに対して
適切なモデルを選択するという分析が行われるべきです。例えば、
上記の場合、
Yab = (a1,b1)*x11 + (a1,b2)*x12 + (a2,b1)*x21 + (a2,b2)*x22 + e
とおいたとき、最適なモデルが
(a1,b1) <> (a1,b2) = (a2,b1) = (a2,b2)
であることが示せるかどうかという問題となります。

 以上のようなことを書いても、私の担当している授業ではt検定の
考え方すらなかなか理解してくれないので、私の授業に反映させるとかいうのは
ナンセンスなのですが。最近、私の授業は必修から選択に変更されました。
 もっとも、ゼミでベイズ的分析法というのを説明することがあったのですが、
このときはt検定よりわかりやすいという学生さんの反応でした。心理学会の
統計分析のデファクトスタンダードが、ネイマン=ピアソン理論からベイズ的分析に
変われば、授業はやりやすくなるのかなと、ふと思いました。学生としては
5%という天の声より、事後分布の比較の方がグラフィカルで直感的に
了解しやすいということだったようです。

岡本安晴




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