[fpr 3391] 天井効果と床効果

南風原朝和

fprの皆様

小塩さんからのコメント,ありがとうございます。

> 平均値とSD基準はあくまでもひとつの基準であり,得点分布
> とその項目内容をチェックした上で天井効果・床効果を判断
> すべきだと考えています。

絶対的な基準ではなく,ひとつの基準,という点は重要だと思います。
私は,その「ひとつの基準」として問題がないか,どのような性質が
あるのか,という観点から,

・平均がどちらかの極に偏っていない場合も該当することがある。
・平均が同じであれば,バラツキの大きい項目のほうが該当しやすい。

といった点を挙げました。

> 過去に学生が作った例では,「毎日鏡を携帯する」というものが
> ありました。毎日持つ者は持ち,持たない者は持ちません。
> このような項目の場合には,中央付近の回答がほとんどなく,
> 1と5に偏ります。

このような項目の場合,両極に集中した回答分布になるとして,それ
は天井効果(あるいは床効果)と呼ぶべき現象なのでしょうか。私は
違うような気がします。

あと,これは小塩さんへのコメントではなく一般的な話ですが,上記
のように実質的に2値分布になるような項目に,通常の因子分析(特
に正規分布を仮定した最尤法)を適用するのはまずいとしても,だか
らといって,それを尺度に含めるのがまずいということにはならない
ので,その点の区別は重要だと思います。上記のような項目も,尺度
を構成する項目として,内的整合性や妥当性の点で大きく貢献してく
れる可能性があり,そのことは因子分析とは別に確認することが可能
です。


小塩 真司 さんからの引用:

> 皆様
> 
> 中部大学の小塩です。
> 学生さんが平均値±SD基準を用いたということについては,
> もしかすると拙著や拙webサイトの影響もあるかもしれない
> と思い(ないかもしれませんが),コメントさせていただこう
> と思います。
> 
> 平均値とSD基準はあくまでもひとつの基準であり,得点分布
> とその項目内容をチェックした上で天井効果・床効果を判断
> すべきだと考えています。査読の際にも,明らかに機械的に
> 項目を削っている尺度構成の論文にはその点をコメントする
> ようにしてきました。
> 
> たとえば経験上,5件法で平均が中央に来るにもかかわらず,
> 標準偏差が非常に大きな項目というのは,「Yes-No」で答え
> るべき項目内容になっていることが多いように見受けられます。
> 過去に学生が作った例では,「毎日鏡を携帯する」というものが
> ありました。毎日持つ者は持ち,持たない者は持ちません。
> このような項目の場合には,中央付近の回答がほとんどなく,
> 1と5に偏ります。平均とSD基準で引っかかってくる可能性が
> 高いのですが,分布を描いて項目内容を見て,「確かに」と
> 感じることが多くあります。
> 
> 逆にこの基準ですと,南風原先生のおっしゃるように,標準偏差が
> 非常に小さく弁別力の少ない質問項目が引っかかってこない問題
> があると私も思います。
> 
> いずれにしましても,「本調査を行う前に10人でも20人でも予備
> 調査をして分布をチェックせよ」ということを,ここ数年は学生
> にもよく言うようにしています。
> 
> 本題からズレてしまったかもしれませんが,少しだけ考えたことを
> 書かせていただきました。失礼いたします。


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南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp


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